苦境の資生堂、「新中計」がインパクトに欠ける理由、魚谷会長が退任、成長戦略や構造改革は不透明
2つ目は、追加の構造改革の内容だ。 2024年には、国内1477人の早期退職募集や、中国での不採算店舗の閉鎖などの改革を実施してきた。第3四半期決算を発表した11月7日には追加の構造改革を2025年に行い、2026年に250億円の利益を生み出すと発表していた。 今回、具体的に説明されると思いきや、その内容も不透明だった。アナリスト向け会見では「250億円の約半分以上が人件費、その他経費から出てくる見込みだが、具体的な内容は申し上げていない」(廣藤綾子CFO)と回答した。
同日の記者会見でも、グローバルでの早期退職募集の可能性などについて「採用抑制や自然減は想定しているが、そういったものはない」と藤原社長が答えている。2026年のコア営業利益率7%の目標は、現時点では達成可能か判断しにくい状況だ。 資生堂は、中国人向けビジネスに依存してきた反動に苦しめられている。「第2の本社」として強化してきた中国事業の売上高は2023年度に2479億円と、日本事業の2599億円と並ぶ柱となっている。
これまで中国では日本メーカー品の品質の高さが評価され、高価格帯のスキンケアなどが人気だった。 しかし、2023年夏頃からは原発処理水を巡る日本化粧品への不買運動が勃発。同時期に、品質を向上させた現地メーカーの低価格品が日本勢のシェアを奪った。 ■中国人向けビジネスは赤字基調 とくに「SHISEIDO」の販売状況は、今第3四半期累計で前期比20%台前半の落ち込みと深刻だ。「『SHISEIDO』の強みは化粧水と乳液。そこが中国のローカルブランドや競合に負けている。2023年からエッセンスやクリームなど高機能品に投資し改善を図っている」(藤原社長)。
足元では景気減速で化粧品需要全体が低迷。中国人を主要顧客とする免税向け事業も、転売目的の「代理購入」が減少して苦戦している。 2026年に向けて「欧米は売り上げも利益も拡大する前提だが、利益率の高い中国や免税向け事業は売り上げ減少の影響を強く受ける」(広報)という。 通過点となる2025年はコア営業利益350億円を目指すが、日本事業でコア営業利益500億円を目指す計画は変更しておらず、中国人向けビジネスは赤字が想定される。なんとも厳しい状況だ。