苦境の資生堂、「新中計」がインパクトに欠ける理由、魚谷会長が退任、成長戦略や構造改革は不透明
「今後2年間で現在の危機的状況から脱却し、体制を再構築する」「大変危機感を持っており、今後の計画をすべて見直してきた」などと藤原憲太郎社長は語ったが、具体的な説明に乏しく、不透明感の残る内容だった。 【写真】10年近く経営トップを務めた魚谷会長は今年で退任するが・・・。 国内化粧品最大手メーカーの資生堂は11月29日、新中期経営計画を発表した。2026年のコア営業利益率(営業利益から構造改革費用などの一時的な要因を除いた数値)7%を目標として、2024年の3.5%(予想)から急改善させる計画だ。今年2月時点では2024年の同利益率6%、2025年度9%を掲げていたが、中国人向けビジネスの不振を受けて目標を見直した。
今回の発表については、8月7日の中間決算時に「本質的な課題に挑む新たな経営戦略を11月末に発表予定」とアナウンスしており、具体的な成長戦略が明かされると期待されていた。 ところがふたを開けてみると、核心を突く情報はほぼ明かされなかった。株式市場の反応も芳しくなく、週明け12月2日以降の株価は年初来安値圏での推移となっている。 ■中国依存脱却の道筋は不透明 新中計発表で期待されていた内容は主に2つあった。1つ目は中国への依存から脱却する道筋を示すことだ。
2026年までの2年間、グループ全体の売上高成長率は、為替影響を除き年平均3%増と計画する。中国と免税向け(トラベルリテール)事業は売り上げの減少を見込むが、成長を牽引するのが米州、欧州やその他のアジア地域となっている。 成長戦略として掲げたのは、マーケティング費用を2025年から2年間の累計で300億円を積み増し、高価格帯スキンケア「クレ・ド・ポー ボーテ」などコアブランドに集中投資するというもの。収益や成長度合いで劣るブランドは撤退する可能性もあるという。
ただ、米州や欧州での注力ブランドはスキンケア「SHISEIDO」や「ドランク エレファント」などに変わりはなく、目新しい施策の説明もなかった。M&A(合併・買収)にも「短期的には慎重な姿勢をとる」(廣藤綾子CFO、最高財務責任者)とした。 化粧品業界に詳しい大和証券の広住勝朗シニアアナリストは「欧米の売り上げ成長シナリオをより明確にイメージさせてほしかった」と話す。 ■「具体的な内容は申し上げていない」