中国船を最前線で監視 海巡署巡視船に記者が乗船 過酷な任務目の当たりに/台湾
(基隆―花蓮、台北中央社)中国軍と同海警局が9日から台湾海峡周辺に多数の艦船を展開する中、中央社記者は12日、海洋委員会海巡署(海上保安庁)の巡視船に乗船し、同署の海上での監視任務に立ち会った。公海で確認した海警局の船からの距離は最も近い時でわずか1カイリ(1852メートル)。巡視船乗組員の任務中の厳粛な雰囲気と過酷さを肌で感じた。 国防部(国防省)によれば、中国人民解放軍は9日から11日まで、航空機の進入を制限する「空域保留区」を浙江省や福建省の東側の空域に7カ所設定した。11日午前6時までの48時間に台湾海峡周辺で活動しているのが確認された中国の軍用機は延べ100機、軍艦・公船は同40隻に上った。13日午前6時までの48時間にも中国の軍用機同46機、軍艦・公船同39隻が確認された。 中央社記者3人は12日朝、北部・基隆市の基隆港から海巡署の国産600トン級巡視船「八里艦」に乗り込み、同署の任務に同行した。乗船すると、乗組員が船首のロケット弾システムから防水カバーを外しているのが見えた。現場指揮官からの指令を受けて船は出港。海上予報によると、この日の台湾東部海域の海上風速は10.8~17.1メートル、瞬間最大風速は20.8~24.4メートル、波の高さは3メートルに達するという。 出港後、船は北東に進んでから南に向きを変え、東部・花蓮の方向に進んだ。高さ3メートル、ビルの2階部分に届くほどの高波を前に、記者3人は大海原の威力を感じ始めた。頭痛や胃のけいれんが現れ、朝食を次々と太平洋に「戻し」た。まだ海警船を見ていない段階ですでにふらふらで、顔は真っ青だった。一方、乗組員は波のリズムを把握しているようで、顔色一つ変えず、落ち着いて自身の持ち場を守っていた。 今回の任務を指揮する同署の謝慶欽副署長によると、同署は6日、中国海警局の船9隻が台湾南西と南東の海域を航行しているのを確認した。12日朝には台湾東部海域にまで移動しており、北に航行して中国大陸に戻るのだろうとの見方を謝氏は示した。 午後2時ごろ、その時がやってきた。 この時、八里艦は花蓮港の東36カイリ(約66.7キロ)の公海を航行していた。すでに海警船は目視できる位置にあり、望遠鏡をのぞくと北から順番に船番号「2302」「2203」「2307」「2304」の4隻の海警船が台湾東部沖から北方面に航行しているのが見えた。八里艦と海警船の距離は1カイリほどまで近づいた。 船橋にいた記者は、八里艦が海警船に近づいた際、船上に注意深い雰囲気が漂ったのを感じた。乗組員は手持ちの器材で記録を取っていた他、高倍率観測器材で海警船の船型や船番号などの詳細を逐一確認していた。 同署職員によれば、6日に台湾南西と南東の海域で確認された海警船は12日、1万トン級の「2901」が先導する第1陣ともう一つの第2陣の二つの船隊に分かれて航行した。八里艦が遭遇したのは第2陣。八里艦は1000トン級の台東艦と600トン級の吉安艦と共に監視任務に当たった。 全行程は約9時間。夕方、八里艦は花蓮港に停泊した。 記者は埠頭(ふとう)に降り立ち、この日の航海を振り返った。同署が遂行する日常の監視任務の過酷さは「陸地の人」が想像できるものではない。出港して監視海域に到着するまでに数時間、並走しながらの監視は十数時間に上る可能性もある。その間、望遠鏡で中国の艦船の動向を随時把握するだけでなく、突然の大波にも注意しなければならない。 記者が船室で休憩していた際、壁のプライベートスペースに家族写真が張ってあるのを目にした。海上での任務は5日以上に及ぶこともある。無情な大海と敵に直面する中、癒やしと励ましを得られるのは家族のぬくもりだけなのだ。 同署によれば、台湾南西と南東の海域を徘徊(はいかい)していた海警船9隻は13日午前2時40分、東部海域を離れて北に戻ったという。 (呉書緯、劉建邦/編集:名切千絵)