【箱根駅伝】伝統の呪縛「1年生は風呂、洗濯の時間まで決まっていた」駒大 後輩を負担から解き放ち歴史的な大逆転
◇3日 第97回箱根駅伝・復路(神奈川県箱根町―東京・大手町間) 往路3位の駒大が10時間56分4秒で13年ぶり7度目の総合優勝を果たした。最終10区で3分19秒差で首位に立っていた創価大を逆転した。駒大は昨年11月の全日本大学駅伝と合わせ今季2冠。山下りの6区で区間賞を獲得した花崎悠紀(富山商)、10区で大逆転劇を起こした石川拓慎(拓大紅陵)ら「谷間の世代」と呼ばれた3年生の踏ん張りで駒大の復権を果たした。 ◇ ◇ ◇ 【グラフで詳しく】箱根駅伝2021年往路順位変動 往復217・1キロの箱根路。その残り2キロにドラマが待っていた。9区終了時点で先頭と3分19秒差。追う背中すら見えない絶望的な差を駒大の10区・石川がみるみる縮めていく。最後は大八木弘明監督(62)から「おまえは男だろ!」と鼓舞されると、創価大・小野寺の背後に付け、抜き去った。 石川は「15キロ地点の給水から体が動いてきた。これは可能性があるかもと。20キロでは目の前にいた。いけると思った」と言う。諦めない心が生んだ区間賞の爆走。そして歴史的な大逆転劇。ど派手なガッツポーズで東京・大手町のゴールに飛び込んだ。 メンバー10人のうち、4年生は1人だけ。「若いチーム」(大八木監督)が箱根を制した背景にはチーム改革もあった。神戸駿介主将(4年・松が谷)は「駒大には伝統があり、1年生の仕事の比重が大きい。風呂の時間、洗濯機の使用時間も決まっていた。自分たちの代はそういうものをなくした。何かを変えなければいけなかった」。 伝統を変えることに一部は反発したが、最終的には「過ごしやすい環境をつくって戦力になってもらおう」とまとまった。練習では力のある1年生と上級生が刺激し合い、「設定タイムが明らかに上がった」と大八木監督は言う。往路の5区で1年生の鈴木芽吹(佐久長聖)が区間4位と好走したように、若き力がチーム力を底上げした。 これで昨年11月の全日本大学駅伝に続き2冠を達成した。もくろみ通りの下級生の台頭により、大学最後の箱根で控えに回った神戸主将は「4年生としても報われた。後輩にはさらに強い駒沢を目指してほしい」。「平成の常勝軍団」と過去に縛られていた駒大が新時代、令和の強豪へと一歩を踏み出した。
中日スポーツ