大人向けのドラマを観たいと思ったとき、NHKくらいしか選択肢がなくなってしまった…「団地のふたり」に称賛の声が上がる理由
「幼なじみ物語」でもある
その後も2人は団地のために動く。住民男性から絶大な人気を誇る福田陽子(名取裕子)と小学生の女児・田川春菜(大井怜緒)、佐久間が、団地内で隠れて飼っていた野良猫を救った。 うるさ型の住民・東山徹生(ベンガル)が規則をタテに処分を主張していたのだが、飼い主を見つけたのである。塗装会社を経営しているノエチの兄・厚志(杉本哲太)に育ててもらうことにした。春菜たちはいつでも猫と会えるようになった。 タイトルが「団地のふたり」なので、単なる「団地物語」のようだが、「幼なじみの物語」でもある。第2回、2人にはもう1人の幼なじみ・空ちゃんがいたことが明かされる。3人は仲良しで、いつも一緒にいたが、空ちゃんは小学2年生のときにガンで亡くなってしまった。 3人はやっぱり内緒で猫を飼っていた。ノエチとなっちゃんは入退院を繰り返していた空ちゃんを励まそうと、その猫を抱いてお見舞いに行った。しかし、病院内に猫は持ち込めない。落胆していたところ、そのまま空ちゃんは帰らぬ人になってしまう。 「泣いたね。こんなに泣けるのかと思うくらい泣いた」(ノエチ) 「泣いたね……」(なっちゃん) このドラマの最大の魅力はエピソードの一つひとつが自分のこと、あるいは自分の近くで起きたことのように感じられるところ。だから、派手さのないエピソードなのに胸を突かれる。 原作は芥川賞作家・藤野千夜氏(62)の同名小説。制作を担当しているのはテレパック。ドラマづくりの名門であり、2021年には「その女、ジルバ」(フジテレビ系)が高い評価を受けた。 脚本も「その女――」の吉田紀子氏(64)。2007年には「Dr.コトー診療所2006」(フジ)の脚本で放送界の栄誉である橋田賞を受けた大御所だ。評判が高いのは当然か。 NHKドラマのギャラは民放の半分程度しか出ない。民放ドラマに主演すると、ギャラは1本150万円から300万円程度だが、NHKは遠く及ばない。助演もそう。ギャラにこだわる俳優は出演してもらうのが難しい。 ところが、このドラマは出演陣がやたら豪華。民放以上に違いない。小泉、小林、ノエチの父親・昌夫役の橋爪功(83)、母親・節子役の丘みつ子(76)、由紀、名取、杉本、春菜の父親・田川賢一の塚本高史(41)、ベンガル、ノエチたちの同級生・春日部靖役の仲村トオル(59)、団地の新住民・森山龍之介役のムロツヨシ(48)。