女子アジアカップ決勝トーナメント進出を決めた新生なでしこジャパン、 GSの戦いで見えてきた「目指す形」と「改善点」を読み解く
2022 AFC女子アジアカップ GSレビュー&決勝トーナメントプレビュー
アジアの頂点を目指し、『DAZN』で独占配信中の2022 AFC女子アジアカップに参戦しているなでしこジャパン。グループステージを2勝1分としグループ首位通過を決めた彼女たちの戦いぶりからあらためて明らかになった、池田太監督率いるチームの目指す方向性と戦いの中で直面した課題について、山口遼氏に分析してもらった。 女子アジアカップGS第3節韓国戦のハイライト動画 文 山口遼 グループステージの3試合を終え、なでしこジャパンはミャンマー、ベトナムに勝利し、最終戦の韓国に引き分け首位通過を果たした。韓国相手には開始早々に先制点を奪ったにもかかわらず試合終了間際に同点ゴールを許してしまい勝ち点3を逃したものの、グループステージ首位通過という結果は彼女たちにとって狙い通りだろう。これにより、今大会最大のライバルであるオーストラリアと決勝トーナメント1回戦で直接対決することを避けられ、その代わりに韓国とオーストラリアをぶつけることに成功した。さらに、なでしこは初戦のタイに勝てば来年のW杯出場が決まる。首位通過を果たしたことはこのアジアカップ制覇へ向けても、W杯出場権獲得へ向けても非常に大きな意味を持つと言える。 ここまで書いてきたように結果については最高に近いものだったが、今後のなでしこジャパンのパフォーマンスを占う上で、内容やプロセスについてもきちんと分析しておく必要があるだろう。W杯出場権にグッと近付いた今、アジアカップでの優勝争いやその先にあるW杯本大会での活躍を見据える余裕が生まれたと同時に、それこそが彼女たちの掲げる目標だからだ。そこで今回は、グループステージを通じてのなでしこジャパンのパフォーマンスについてレビューを行っていきたい。
まずまず機能したプレッシング
大会プレビュー記事(記事リンクを参照)で、池田太監督は対ヨーロッパ、対ポジショナルプレーを意識してかプレッシングを重視しようとしていることに触れた。これについては、グループステージ3試合を通して機能していたと言えるだろう。 開幕前の大会プレビューでは、アジアで対戦する各国は力の差を踏まえてそこまで地上戦でボールを前進させることにこだわらないのではないか、そのため対ポジショナルプレーを意識しているように見えるプレッシングは、その局面自体があまり現れないのではないかと予想していた。しかし蓋を開けてみれば、アジアのチームはフィジカルやキック力にさほど長けていないからかショートパスで攻撃を構築しようとすることが多く、日本のプレッシングの場面が思った以上に試合の中で見られた。相手のビルドアップを引っかけて前向きでボールを奪いそのまま決定機に繋げたシーンも多く見られ、池田監督の目指すサッカーのスタイルは表現できていたと言える。 だが、これは決勝トーナメントやW杯本戦でも同じように機能することを保証するわけではないだろう。グループステージで戦った国々はそれぞれパスを繋ごうとするものの、プレーの方向をすぐに限定される、スペースと選択肢を制限されると露骨にプレーの精度が落ちる、配置のバランスも良くないと、ビルドアップの完成度は非常に低かったと言える。実際、3カ国の中では圧倒的に個のスキルも配置のバランスも優れていた韓国に対しては、ファーストDFの距離が遠いために選択肢やスペースを制限し切れず、ズルズルとゴール前までボールを運ばれる場面も目についた。これは大会プレビューでも述べた通りである。ボールを奪うためにはファーストDFの目的地をボールホルダーの持つボールに設定し、より奪いにいく姿勢を見せなければチームの目標である「奪い切る」ことは実現できないだろう。