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【小塚かおるの政治メモ】 小池知事が自民推薦を蹴ったわけ

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「小池愛」の女傑、荒木ちはる都民ファースト代表が仕掛けた

 選挙戦真っ只中の東京都知事選は7月5日が投開票。再選に挑む現職の小池百合子氏(67)のほか、主要候補は、れいわ新選組公認の山本太郎氏(45)、立憲民主党や共産党などが支援する宇都宮健児氏(73)、日本維新の会が推薦する小野泰輔氏(46)、NHKから国民を守る党が推薦する立花孝志氏(52)などとなっている。  新型コロナウイルス禍で首都の舵取りをどう担っていくのか。依然、東京は新規感染者が連日50人前後で推移し、不安が尽きない。そんな中での都知事選なのに、都民の関心も論戦も低調なのは、小池氏が圧倒的に優位な戦いを進めているからだろう。  これは、国政の野党系候補が割れたこと以上に、自民党が独自候補を擁立しなかったことが大きい。  そのうえ、小池氏は自民党を翻弄させ、手玉に取った。  当初、小池氏は自民党との連携に前向きに見えた。東京五輪開催や新型コロナ対策などで何度も自民党本部を訪れ、二階俊博幹事長との蜜月をアピール。二階氏も「要請があれば、直ちに推薦する」と前のめりで、都議会で対立するなど小池氏とは距離のある自民党東京都連でも、党本部の推薦判断を受けて苦渋の決断で従う、というようなシナリオが練られていた。  ところが、土壇場になって小池氏が「政党の推薦を求めない」と表明。梯子を外された自民党は、二階氏が「自主投票」の形で一方的に小池氏を応援すると言うしかなく、恥をかかされた。  自民党内からは「無党派層の票も考えたら、自民党の推薦がない方がいいということだろう。自民党には独自候補がいないのだから、自民党支持層の票の多くは勝手に小池氏に流れる。そう計算した上での判断。小池氏の方が一枚上手だった」(中堅議員)と恨み節が聞こえてくる。  「感染爆発」「ロックダウン」などのキャッチフレーズやパフォーマンスで世論を味方につける小池政治の真骨頂とも言えるが、実は、この「自民党の推薦をもらわない」という決断は、小池氏本人というよりも、小池氏を支える最側近が強く促した結果のようだ。  複数の関係者への取材を総合すると、舞台裏が見えてきた。  「荒木千陽(ちはる)さんですよ。荒木さんが自民党から推薦をもらうことに反対した。小池知事が自民党と荒木さんを天秤にかけ、荒木さんが勝ったということでしょう」(関係者)  荒木氏は小池氏が国会議員時代からの秘書で、現在は都議会議員。小池与党の地域政党「都民ファーストの会」代表だ。都議会は来夏が改選期。1年前の今、小池氏が自民党と手を組むことは、都議選で自民党と戦うことになる都民ファーストの会にとって不都合なのは間違いない。  そうした荒木氏の意向を小池氏が汲んだわけだ。  「それだけに留まりません。荒木さんに対する小池知事の信頼は絶大。今度の都知事選の仕切り役である選対本部長も荒木さんに託しています」  「一方、荒木さんも小池知事のためなら何でもというほど『小池愛』がものすごい。自民党への過剰な接近は、小池知事のためにもならない、という判断があるのでしょう」(同)  小池氏と荒木氏の関係は濃密だ。  荒木氏は熊本県出身の38歳。国会の議員会館の小池氏の事務所を飛び込みで訪ね、秘書を6年間務めた。そのうちの1年半は小池氏の自宅で同居してもいる。  3年前の2017年の都議選に初出馬したのも小池都政を支えるためだ。当時、応援演説に立った小池氏は「荒木千陽。私の秘蔵っ子でございます」「(選挙区である)中野区にお嫁に出します」と訴えていた。  そして、荒木氏もメディアの取材に次のように話している。  「(同居中は)食事や洗濯の世話をしたことは一度もなく、同居人または家族というイメージでしょうか。私はいつでも知事に意見を言ってきました。知事に近いから『イエスマン』という発想自体が時代錯誤。都議になってもどんどんモノ申していきます」(2017年都議選に当選時)  「私の強みは、秘書を務めて、小池知事と信頼関係があるからこそ、何でも言えること。『絶対無理です』とか、『おかしいですよ』とか、本気の喧嘩もできるし、本気の議論もできるし、いいものは守れる。小池知事は、『そこまで言うか』と思っているかもしれませんが」(2019年都民ファーストの会代表に再選時)  荒木氏は今でも小池氏宅に時々泊りに行っているという。小池氏は20代に1度の離婚を経て、長らく独身。荒木氏が言う通り、2人は政治家と秘書の上下関係というより、親子や姉妹のような家族に近いのだろう。  ベストセラーとなったノンフィクション作家・石井妙子氏の「女帝 小池百合子」で描かれたように、小池氏は見栄っ張りな両親に育てられ、上昇志向が強く毀誉褒貶の激しい父親を若い頃は毛嫌いしていたという。  その一方で、小池氏自身もカイロ大卒業やテレビキャスターなどの華やかな経歴を武器に上り詰め、政界進出後は細川護煕氏、小沢一郎氏、小泉純一郎氏などの権力者に寵愛されてきた。  だが、「政界渡り鳥」と揶揄され、決してシンパが多かったとはいえない。そういう人は疑心暗鬼が強いものだ。虚勢を張り続けるのも疲れるはずだ。  小池氏は実は孤独な人なのではないか。そんな小池氏にとって、今、唯一に近い心からの支えとなっているのが荒木氏ということなのではないか。そんな結論に思い至るのである。  最後に、情けないのは自民党だ。  この4年間、都議会で小池都政の野党として対峙してきたのだから、独自候補を擁立し、小池氏とは違う東京の未来像を提示して、戦うべきだった。  ここまでの小池都政は、築地市場の移転問題を混乱させるなど、失政の方が多かった。コロナ対策以外にも、財源問題、都市防災、少子高齢化対策、五輪開催などなど、都知事選での争点は山ほどあるのに、論戦が低調なのは残念で仕方がない。 ■小塚かおる(日刊現代第一編集局長) 1968年、名古屋市生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。関西テレビ放送、東京MXテレビを経て、2002年から「日刊ゲンダイ」記者。その間、24年に渡って一貫して政治を担当。著書に『小沢一郎の権力論』、共著に『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』などがある。

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