戻ってきた広島産サワラ 26年ぶり漁獲量100トン超 放流・網の見直しの成果
呉市などで水揚げされる広島県産サワラの漁獲量が2020年、26年ぶりに100トンを上回り、回復傾向を見せている。一時は10トン台にまで落ち込んだが、瀬戸内海沿岸の各県や漁業関係者たちの資源保護の取り組みの効果が出たとみられる。同市の阿賀漁協は、今年も近海で受精卵を放流した。 17日午後8時過ぎ、県水産課と市農林水産課の職員、漁師の計6人が1隻の漁船に乗り込んだ。産卵期を迎えた取れたてのサワラの提供を受け、船上で卵を人工授精して海に放流するためだ。 阿賀港を出て約1時間後、漁船11隻が操業する下蒲刈島の南沖の漁場に到着。2時間で、白銀に輝く60~80センチ台のサワラを雌雄計11匹確保できた。県の技師が手際よく卵と精子を採取し、ボウル内でかき混ぜて授精。船長の松谷博文さん(53)が「大きく育てよ」と声を掛けながら約5万粒を放った。 呉は県産サワラの代表的産地で、国が18年まで取っていた市町村別の統計ではシェア50%以上の年もある。資源回復を目指し、同漁協は02年から受精卵の放流を続ける。松谷愿(すなお)組合長は「多彩な食べ方が楽しめる魅力的な魚。できることを続けたい」と話す。 県産サワラの漁獲量は、1979年にピークの746トンを記録したが、01年には18トンに落ち込んだ。漁網の発達による乱獲などが響いたとされる。危機感を募らせた関係者は受精卵や稚魚の放流、漁網の編み目を大きくするなどの対策に努めた。受精卵の放流は三原市漁協なども取り組む。 20年には128トンまで回復した。県水産課は「長年の取り組みの効果が表れてきている。引き続き他県とも連携し、瀬戸内海の豊かな資源を守っていきたい」としている。
中国新聞社