銀座「すがの」は、〆の飯がうまい!──連載「Must-Go New Restaurants」
連載「Must-Go New Restaurants」はオープンしたばかりの新しい飲み食い処を紹介する。銀座にオープンした「すがの」は、粋が詰まった良店だ! 【写真を見る】すがのが出す精緻な料理
こだわらない、こだわり
夜の帳が下りると、銀座らしい華やかさをたたえる銀座8丁目・金春通りに、名店と呼ぶにふさわしい料理屋が誕生した。15歳から日本料理の道に進み、渋谷「末冨」の立ち上げにも尽力した菅野功一さんが満を持して独立したのである。 菅野さんに自身の料理をどう表現するかと訊くと「こだわらないところにこだわるところ」と答えた。 「たとえば『椀』ですが、私が目指すのは、鰹と昆布で引いた吸い地と、ひとつの椀種だけで作るものです。でも、まだ経験不足でそこに辿りつけずにいるのですが」と、菅野さんが語るように、皿の上にのせるのは必要最低限で、余計な飾りはない。また、味つけも最小限にし、食材のポテンシャルを最大限に引き出す。 こう聞くと、ただの素朴な皿をイメージしてしまうが、菅野さんの皿には艶がある。それがこだわりなのだろう。「椀」は、椀種に朱赤のホシコとグリーンの酢橘が添えられて、グッと色気が増した。「末冨」のシグネチャーでもある「焼きすっぽん」は、西京味噌をまとわせた、華やぐような風味が特徴だ。「鮑粥」は、酒蒸しと酒煎りの2種類の鮑を使い、仕上げに入れる鮑の肝を裏ごししたソースの中には、生の鮑をすりおろしたものがはいっている。 「鮑をすりおろすと、『とろろ』のようになるので、肝ソースにコクが加わります」 これは昔からある技法というが、手間がかかる。しかし菅野さんにとっては、食材の味を最大限に引き出すために必要な最小限のことをしているだけ、なのである。 “こだわらないところにこだわる“、それが菅野さんの料理美学だ。 菅野さんの技が散りばめられたコース料理の中で、最も評判が高いのが〆のごはんだ。土鍋で炊いた白飯が供され、米も山形や岡山、新潟など、その時にいちばんだと思う品種が使われる。添えられた副菜もバリエーション豊かで、ひとつひとつのクオリティがじつに高い。 「銀座すがの」で味わう日本料理は、季節の移ろいが待ち遠しくなる。新たな名店の誕生を祝福したい。 PROFILE 菅野功一 大阪出身。鮨職人だった父の影響を受け、中学卒業後に料理の世界に入る。関西や東京を中心に数々の料亭や日本料理店で修業し、渋谷「末冨」の立ち上げに尽力。「末冨」店主、末冨康雄氏の後押しを得て、2022年4月、「銀座すがの」をオープン。 INFORMATION 銀座すがの 住:東京都中央銀座8-7-7 3F TEL:03-6263-8873 営:17:00~、20:30~ 休:不定休 URL:https://instagram.com/sugano.ginza 文・高橋綾子 写真・八木竜馬
文・高橋綾子 写真・八木竜馬