福島県勢初の高校サッカー決勝進出を狙う尚志は、なぜ旋風を巻き起こしているのか?
ベスト4が出そろった第97回全国高校サッカー選手権は、舞台を埼玉スタジアムに移して今日12日に準決勝が、14日には決勝が行われる。前評判が高かった青森山田(青森)と流通経済大柏(千葉)が順当に勝ち上がってきたなかで、初出場の瀬戸内(広島)と共に旋風を巻き起こしているのが尚志(福島)だ。 5年連続10度目の出場となる今大会では、2回戦で東福岡(福岡)、3回戦では連覇を狙う前橋育英(群馬)と優勝候補を次々と撃破。福島県勢として初の準決勝進出を果たした2011年度の第90回大会以来、7年ぶりとなる準決勝の舞台で青森山田との東北対決に臨む。 尚志サッカー部の創部は1997年。順天堂大学卒業後は福島県郡山市を活動拠点とする福島FCでプレーしていた、千葉県出身の仲村浩二氏が初代監督に就任した。以来、バルセロナ五輪出場を目指す日本代表としてアジア予選を戦った経験をもつ指揮官は、部員たちとノートを交換し続けてきた。 「試合をするたびに自分のプレーのよかったところや悪かったところを含めて、好きなことを書いていい、と部員たちには言っています。試合の翌朝には職員室の僕の机の上に積み重ねられていて、ひとつひとつに僕がコメントを返していく形をとっています」 いわゆる「サッカーノート」の原点は仲村監督の母校である、千葉県の強豪・習志野でサッカーに明け暮れていた高校3年間にさかのぼる。いまも恩師と慕う当時の監督で、流通経済大柏を率いて今大会に臨んでいる名将、本田裕一郎監督(71)が実践していた手法を踏襲した。 ノートの形はA4版で40ページほど。しばらくは市販のノートを使用していたが、ベスト4に進出した7年前を境に尚志オリジナルの特別仕様版を作製し、いま現在に至っている。1ページにびっしりと文字を書き込んでくる部員も多いなかで、仲村監督は自らにあるルールを課している。 「褒める言葉をなるべく多く書くようにしています。たとえば自信を失っているようなときは、お前のこういうプレーがいいんだよ、といった具合ですね。自分本位の考え方になっているときは厳しい言葉を返しますけど、最近の子どもたちは褒めてあげたほうがはるかに伸びるので」