全国の「温泉むすめ」企画 橋本竜さんに聞く 福島県郡山市出身 コンテンツプロデューサー 観光資源価値高める
全国各地の温泉地をPRするアニメキャラクター「温泉むすめ」の地域活性化プロジェクトを手がけているのは、郡山市出身のコンテンツプロデューサー橋本竜さん(47)だ。今、地方創生の仕掛け人としてさまざまな業界から注目を集めている。活動の原点は「古里福島をはじめ、日本を元気にしたい」との思いにあった。 ―温泉むすめを企画したきっかけは。 「世界から見ると、日本はアニメや漫画を生み出すことができる『サブカルチャーの国』とされていた。この力を生かせば、日本は以前のような世界をリードする国に生まれ変われると思った」 ―どのような活動か。 「各温泉地の特徴を踏まえたアニメキャラクターを制作している。事業開始から8年で、全国に127の温泉むすめが誕生した。それぞれイラストレーターと声優が違うのが、他のコンテンツにはない特徴。県内は『いわきあろは』『飯坂真尋』『東山季利花』『磐梯熱海萩』『日中早百合』の温泉むすめがいる」
―地方創生へ強い思いを持っている。 「会社の収益はグッズ販売とイベントの売り上げが柱。グッズは現地でしか手に入らないようにしている。可能な限り、地方や温泉地に足を運んで現地でお金を落としてもらう。それが地方創生で一番重要。全て地域ファースト、ファンファーストで運営しており、目前の利益ではなく、未来を見据える。コンテンツだけでなく、観光資源の価値を高める活動に力を入れている」 ―効果はどのぐらい出ているのか。 「福島市飯坂温泉の『飯坂真尋』が一番活用されており、これまでの経済効果は数億円以上になる。飯坂温泉の関係者は温泉地として生き残りへの危機感が強くあるのに加え、サブカルに詳しい方が多く、キャラクターに対する熱量が高い。温泉むすめが好きで福島の大学に進学したファンもおり、全国の温泉地で移住定住にもつながっている」 ―将来の目標は。 「現在は東京を中心に活動しているが、いずれは古里に拠点を移したい。地域の魅力を発信する仕事を続けながら、生まれ故郷に誇りを持って地域を盛り上げる『地域プロデューサー』の育成にも挑戦したい。キャラクターのファンが『聖地巡礼』として福島だけでなく、各温泉地や地方を巡る旅をしてほしい。古里のためにこれからも自分なりの方法で突き進んでいく」
はしもと・りょう 郡山市出身。金透小、郡山二中、郡山高から東京にある服飾の専門学校に進学。卒業後、デザイナーズブランド「コム・デ・ギャルソン」を経て、ウェブデザイナーとして独立した。日本中で大ヒットした美人時計をプロデュース後に渡仏し、東日本大震災を機に帰国、KADOKAWA、サイバーエージェントグループに勤務。2016(平成28)年、エンバウンドを設立し、地域活性化プロジェクト「温泉むすめ」をプロデュースした。社会人になってから青山学院大経営学部に進学した。