「医師になるために留学する」学生が増加中?「日本の医学部」と「海外の医学部」の決定的な違いとは
海外医学部に留学する学生が増加している?
日本の医学部を経ずに海外医学部へ進学するケースが最近増加している。厚生労働省によると、昨年度の医師国家試験合格者9716人のうち、海外医学部の卒業生は全体の1.5%にあたる145人。 【画像】すごい…!医学部9浪の末に母をバラバラにした娘の「直筆手記」入手…! ’18年度が95人だったことを考えると、5年で50人も増えた。なぜ海外医学部を目指す人が増えているのか。海外医学部のメリットとは。NICインターナショナルカレッジの廣田和子校長に聞いた。 NIC(International College in Japan)は、’88年設立。海外大学進学および卒業を目指すための独自のメソッド教育を行っている国際教育機関で、1万人の学生を海外に送り出しているインターナショナルカレッジの名門だ。 NICは、’18から提携している英語で医学部の授業が受けられる国立マルタ大学と共同で’24年、新たに医学部コースを開講した。廣田校長によると、海外の大学とも提携し、約一年間の英語で授業をする医学部専門コースは日本で唯一だという。 NICで来年にイギリスやマルタなど海外医学部入学を目指す学生は20人ほどで、昨年度から1.5倍。希望者が増えている理由について、廣田校長はこう説明する。 「国境なき医師団など、海外での医療活動ができる可能性が広がる。日本にとどまることなく、世界をフィールドにできるのが利点かと思います。NICでも、目的意識を持った人が集まる傾向にあります。 卒業生が言っていたのですが、学会などでも英語を使わないのは日本だけ。ほかの国はほとんどが英語です。つまり、英語で医学を学ぶことで最先端の研究情報をキャッチしやすい」 日本の医師免許を活用して海外で働くには、二国間協定制度を利用したりJICAの医療チームに所属したりするなどの方法はあるものの、門戸が狭い。絶対に海外で働きたいのなら、最初から海外医学部に入るほうがいい。さらに、海外は金銭面でのメリットもある。 ◆「海外の医学部」ならではの意外な特徴とは 「日本の私立は年間500万~1000万円。それよりは海外のほうが安い傾向はあります。ブルガリアのソフィア医科大で120万円、マルタ大学で400万円ほどですね」 試験が厳しい日本より、入学自体は比較的容易であることもメリットの1つだ。 「日本だと入学試験で10%ほどしか合格しません。3浪以上になると精神衛生上良くないともいわれています。何年も浪人するより、世界を目指して医者になる選択があると分かれば、希望が芽生えると思いますよ。 マルタ大学だとオンラインの英語面接が必要です。英語力と英語での専門知識が問われますが、NICで実施する国立マルタ大学と共同カリキュラムで準備できるので大丈夫です」 補足をすると、入学試験については各大学でまちまち。ブルガリア、ハンガリーなどでは筆記試験がある医学部も多い。また、海外は日本に比べて進級が難しい。 「でも、競争ではないので日本とは厳しさの雰囲気が違う。挫折しないようなプログラムをNICでは心がけています」 イギリスの大学は卒業後、医師登録がされ、オーストラリアやアジアなどでもそのまま医師登録ができる。また、EU圏の大学卒ならEUでのみ働ける医師免許、米国の大学卒なら米国の医師免許が取得できる。 ただ、海外医学部を卒業後、日本の医師国家免許の試験を受けて合格すれば日本で医師として活動することも可能だ。前述のように昨年は145人が受験。日本の医師不足問題もあり、海外大卒の医師も増えている。 「厚労省も海外医学部生のために受験をアドバイスするサイトを公開したりしていて、意識が変わってきていることも感じます。日本では英語を話せる医者が少ないことを考えると、日本で医療活動をしたい人にとっても海外医学部はいい選択だと思いますよ。もっと認知されれば、さらに希望者は増えるはずです」 ちなみに東欧は、英語力があれば比較的進学しやすい。ただし、授業は現地語が多いので、語学習得がポイントだ。一方、米国は大学に医学部はなく、大学卒業後にメディカルスクールに入ることで医学教育が始まる。メディカルスクールは米国籍保有者が優先されることもあり、入るのはかなり難易度が高いのだという。 海外で医師として活躍したいという意思があるのであれば、海外医学部という選択肢を頭に入れてみてもいいのではないだろうか。
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