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石牟礼道子「苦海浄土」水俣へ導いた巫女【あの名作その時代シリーズ】

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西日本新聞
石牟礼道子「苦海浄土」水俣へ導いた巫女【あの名作その時代シリーズ】

寄せては返す波に静かに揺れる手こぎの「伝馬船」。かつて、水俣湾を当たり前に行き来した船だが、今では専門の船大工もいなくなった=熊本県水俣市梅戸

 ある裁判の記録が残っている。一九七四年六月、熊本地裁の出張尋問で水俣病患者の男性が証言した。  「―私たちは、小さいときに、桃太郎が鬼を退治に行く話をよく聞かされたわけで、桃太郎は本当に気は優しくて力持ちで、弱い者を助けて、鬼を退治すると、本当にえらいなと思っとりましたが、その桃太郎が鬼を退治するんじゃなくて、弱い者をいじめ抜いて本当に悪い桃太郎になってしまったなと、そういうふうに思って、情けないわけです―」  ここでいう桃太郎とは国家を、鬼とは水俣病の原因企業・チッソを指す。被害者に優しく手を差し伸べるはずの桃太郎が、なぜ弱い者をいじめるのか、と。後日、水俣病の支援者に向けた機関紙に、この証言が再現された。  「わたしどもは、親たちから小まんか時、桃太郎の話をきいて、桃太郎は、えらかねえ、ち…思いよりました。鬼征伐にゆく桃太郎は、えらかねえ、ち、思いよりました。桃太郎は、…ああ、裁判長さん、今は、逆さま、逆さまの世の中で、桃太郎は弱かもんいじめをして…、鬼がわたしどんばいじむっとこれ、桃太郎はどげ(どこ)…ああほんなこて、こげん裁判ばして、裁判長さん…」  一読して分かるように、後者は脚色である。だが、それは圧倒的に前者の「事実」を凌駕(りようが)する。石牟礼道子さんの筆にかかってしまうと。

本文:2,378文字

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