全国高校演劇大会 最優秀賞の戯曲を映画化「アルプススタンドのはしの方」
奇しくも、甲子園が中止になった2020年に公開されて
城定 完成した作品は正直手応えがありましたが、いつもはなかなか多くの人に見てもらえないことが多い中、今回はたくさんの応援もいただいて、すごく広がりを見せてくれて嬉しかったですね。甲子園が中止になったことで、嫌なことを思い出させてしまうのではないかという複雑な想いもありましたので、なおさら多くの人に見ていただけてありがたかったです。 小野 映画賞をいただけたのも、みんなが一緒になって作ったものが評価されたという感覚でとても嬉しいですし、運命の導きでいろいろな人々が交わりながらこの作品に携わった結果、さまざまな反響もあったのかなとも。それこそコロナ禍と公開が重なったのも、今では何か数奇な運命だったのかなという気もしています……。 城定 もともとそういう想いで作った映画ではなかったけど、やがてコロナがすっかり過去のものとなったときに「高校野球が中止になった年に、この映画は公開されたんだよね」って思い出していただけたらいいかなと。また、早くそういう世の中になってほしいですね。 小野 みなさん「30回見た」とかものすごい数を見られていて、そこまで深く愛してもらえている作品ですから、次はブルーレイで何回もご覧になっていただいて、またいろいろな気持ちを思い出したり、共感してもらえたり、元気を出していただけたら嬉しく思います。 中村 今では私よりも深く作品に詳しい方がたくさんいらっしゃいますので、今度はぜひお家で気軽に、見たいと思ったときに見ていただきたいですね。 城定 ちなみに今回のBDの特典として、3つのスピンオフ・ドラマの脚本を収録したブックレットが封入されてます。今後それを撮る予定があるかどうかはわからないけど(笑)。 小野&中村 撮りたい撮りたい! 城定 僕も撮りたい(笑)。 取材・文=増當竜也/撮影=近藤みどり/制作=キネマ旬報社(キネマ旬報2月上旬号より転載) TOP写真左:城定秀夫(じょうじょう・ひでお)/1975年生まれ、東京都出身。武蔵野美術大学卒業後、フリーの助監督としてキャリアを積む。2003年「味見したい人妻たち」で映画監督デビュー。その後、Vシネマ、ピンク映画、劇場用映画など100を超える作品を監督している。近作に「性の劇薬」「アルプススタンドのはしの方」「花と沼」など。 TOP写真中央:小野莉奈(おの・りな)/2000年生まれ、東京都出身。出演作にTBSドラマ「中学聖日記」、映画「テロルンとルンルン」(18)「リビングの女王」(20)などがある。本作は2019年の浅草九劇で上演された舞台版からの続投。 TOP写真右:中村守里(なかむら・しゅり)/2003年生まれ、東京都出身。2018年に「書くが、まま」で映画初出演を果たし、MOOSIC LAB2018にて史上最年少で最優秀女優賞を受賞。本作は小野と同じく、舞台版からの続投。