<アルテミラグループ7月本格始動・中塚晃章氏(AJH社長)に聞く>アルミ缶9拠点に横串組織、生産技術高める。圧延品は車向けなど拡販
アルミ缶国内首位、アルミ板3位の総合アルミグループであるアルファ・ジャパン・ホールディングス(AJH、社長・中塚晃章氏)は、7月1日に「アルテミラ・ホールディングス」へ名称を変更し、製缶・圧延のグループ一体運営を本格化する。アルテミラグループを統括する中塚晃章社長に今後の事業戦略を聞いた。(遊佐 鉄平) ――7月からの運営体制について。 「昭和電工のアルミ圧延品事業とアルミ缶事業、三菱マテリアルの旧アルミ事業を取得し、4月から約2カ月間かけて新会社のブランドイメージや事業運営の方針などを議論してきた。まずパーパスに〝アルミのテクノロジーで夢のある未来を〟を設定し、アルテミラという会社名を採用した」 「組織体制はいくつかの制約もあり、現在の昭和アルミニウム缶(昭和ア缶)という事業会社の下にユニバーサル製缶(ユニ缶)とMAアルミニウム(MAア)、堺アルミ(堺ア)、越ハナキャンズが並ぶ形で変更はしていない。しかしアルミ缶事業は、昭和ア缶をアルテミラ、ユニ缶をアルテミラ製缶に改称して〝ONEアルテミラ〟としてブランドを統一するほか、私自身が両社の社長を兼務する。また圧延子会社を含むグループの統一窓口を設置し、ホールディングス機能もアルテミラに付加する」 ――4月からの議論でグループシナジーの見通しは見えたか。 「一つは購買と調達。圧延品と缶は重なっていないが、商社との付き合いの中で重複して購入していたり、条件が異なっていたりしたので精査していく。またアルミ缶の川上から川下まで携わっている利点を生かし、使用済みアルミ缶(UBC)の活用でできることがある。究極的には、100%リサイクル缶に持っていけるような仕組みづくりを考えたい」 ――各種議論の中で製缶事業、圧延品事業の課題として挙がったことは。 「アルミ缶事業においては原料のアルミ価格高騰がコスト増となっている。すでに昭和ア缶はアルミ地金連動制(フォーミュラ制)を多くの取引で導入しているがユニ缶はまだ道半ば。我々もコスト高を吸収できる限界を超えているため、ユニ缶でもフォーミュラ制の導入を顧客に提案し始めた。早期導入に向けて取り組んでいる」 「生産面においては、国内9工場はこれまでそれぞれが独立して生産管理していた。生産技術や品質管理が工場ごとに若干異なっていたため、9工場を統括する横串組織を設置した。担当役員が工場を管轄して生産技術を高めるほか、今後は生産品目の移管や多品種製品の効率的な生産にも取り組んでいく」 ――圧延品事業は。 「アルミ缶事業と比較すると圧延品の2社は生産品目の重なりが少なく、シナジーの発揮は緩やかになりそうだ。ただ現場レベルの交流は始まっており、先日も堺アの従業員がMAアを訪問して技術交流した」 「自動車分野が販売の4割を占めるMAアは、LIB向けアルミ箔や自動車用押出材を注力分野と位置付け、採算管理をしっかりした上で販売量を増やしたい。自動車熱交換器材も重要な製品だが、ここはグローバル展開が課題。まずは圧延の生産性向上などを通じて収益基盤を整え、その上で海外展開を考えることになる。順序だてて着手したい」 ――グループ内への缶材供給を増やす考えは。 「現在すでに缶材の出荷はフル稼働状態。生産能力をこれ以上缶材に振り分けることは、今のところ考えていない」 ――堺アの取り組みは。 「主力事業の電解コンデンサー箔をハイエンドマーケットで拡販する方針に変わりはない。中国拠点で検討している母材の現地調達化は、まだ時間が掛かる見通しだ」 ――このほか圧延品事業で取り掛かるべきことは。 「圧延品事業においても、燃料価格や添加原料価格など各種コストの上昇が顕著だ。自動車関連ユーザーのシェアが多い点で難しさはあるが、加工賃の改定に向けた価格交渉は取り組まなければならない」 ――今後の計画は。 「4月から3カ月間でおおむねの会社方針を作ることはできたが、7月からの3カ月間で組織や人事体制、環境対応で何ができるかを深掘りしたい。この期間では中長期目線で取り組むべきことをまとめたいと考えている」