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大阪市が新型コロナの感染防止対策の検証と見直し

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週刊金曜日

 新型コロナウイルス感染症について、大阪府が政府や他の自治体に先駆け、感染防止対策の検証と見直しを進めている。吉村洋文知事は、これまでの対策が経済・社会に大きな打撃を与えたことを反省し、第2波については打撃を最小化しながら効果的に感染を抑止する対応を目指している。  大阪府は政府の緊急事態宣言などに従って外出や営業の自粛を府民に求めたが、そうした対策の副作用はきわめて大きかった。  今年4月、全国の休業者(仕事を持ちながら、仕事をしなかった雇用者と自営業者)は前年同月より420万人も増え、全国のホテルなどの延べ宿泊者数は76・8%も減少した。4月の生活保護申請者数は大都市圏で急増し、大阪市では前年同月より37%も増えた。  同じ事態を繰り返すべきではないと考えた吉村知事は、6月11日に公開の大阪府新型コロナウイルス対策本部専門家会議を開催し、「K値」という指標を発案した中野貴志・大阪大学教授と、大胆な提言をツイッターで発信している宮沢孝幸・京都大学准教授から意見を聴いた。  中野教授によればK値とは直近1週間の類型感染者数の増加率を今日の感染者数を基準として評価したもの。時の経過とともに安定的になり収束に向かうが、その速度が国によって異なるので、その国がまだ危うい状態かどうか把握できる。4月に論文を発表すると、国際的に高く評価された。  中野教授はK値を使った分析に基づき、日本全体も大阪府も感染は3月28日にピークに達して収束に向かっていたとし、政府の緊急事態宣言に基づく外出や営業の自粛はデータを見る限り意味がなかったと述べた。  第2波対策としては、入国規制などの「水際対策」と「クラスター(感染者集団)対策」が有効だとし、K値を使って早期検知に努めるべきだと助言した。 【政府や業界の指摘も見直し 独自のガイドライン検討へ】  一方、宮沢准教授は、新型コロナウイルスはある程度の量がなければ感染しないが、空中を漂うウイルスの量はごくわずかなので空気感染は考えなくてよいと説明。政府のガイドラインではほとんどの業種について人と人との間隔を2メートル(最小1メートル)開ける「ソーシャル・ディスタンス」を求めているが、夜の繁華街や飲食店での飲み会、カラオケなどで騒ぐと唾液が飛んで感染するのが危険なので、それをやめさせれば感染しないことなども述べた。  安倍晋三首相は「接触機会を最低7割、極力8割減らす」よう求めたが、減らすのは「接触機会ではなく、感染機会」というわけだ。  2人の説明を受けた吉村知事は今後の対応について、経済・社会への打撃をできるだけ少ないものにする考えを明らかにした。具体的には、営業の自粛はできるだけ求めず、求める場合でも一律ではなく業種などを限る、また外出の自粛も全員ではなく高齢者などリスクの高い人たちを中心にするなどの方法を検討するとみられる。  ソーシャル・ディスタンスについても、政府や業界のガイドラインが正しいかどうか見直し、経済・社会への影響も考慮した独自のガイドラインを検討する。  K値の考え方を取り入れてまず見直したのが、休業を要請したり解除したりする際の基準である「大阪モデル」だ。  22日の専門家会議で決まった新基準は、(1)感染経路が不明な新感染者が直近1週間で前の週と同数以上になったうえ、1日平均5人以上、(2)直近1週間の新感染者が計120人以上になり、4日間増え続けている――の両方が満たされた時「警戒(黄)」とし、さらに(3)重症者用の病床使用率が70%以上となると「非常事態(赤)」とするものだ。  吉村知事については、独自の「大阪コロナ追跡システム」や、大阪大学と創薬ベンチャー・アンジェスが開発中の「大阪産ワクチン」の治験をめぐる前のめり発言などに疑問や懸念が出されてきた。今度の見直しの結果が注目される。 (岡田幹治・ジャーナリスト、2020年7月3日号)

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