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日本の音楽シーンにロックバンドを根付かせたプリンセス プリンセスの傑作『LET'S GET CRAZY』

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ロックバンドの矜持が見える傑作

M1「GET CRAZY!」からして正統派のR&Rである。その出で立ちからして当時からバリバリ“ロック姉さん”なオーラを出していた中山加奈子(Gu)の鳴らすギターはさすがの貫禄。キース・リチャーズばりのワイルドでルーズなリフを聴かせる。M2「それなりに いいひと」もまたリフもののロックチューンで、ギターもさることながら間奏で魅せる今野登茂子(Key)のキーボードソロもいい。こちらはジョン・ロードを彷彿させる。 この他、M6「夕陽がよんでいる」、M11「HEART STOMPIN' MUSIC」などもオールドスクールなR&Rナンバーだし、パンキッシュなM5「へっちゃら」の他、シンセの音色のいなたさは否めないものの、ロックのアップデイトを試みていたと思われるM7「瞳だけはみつめない」やM8「ひとりじめ」など、『LET'S GET CRAZY』は容赦なくロックバンドとしての矜持が垣間見えるアルバムである。邦楽史にその名を残すバラードナンバーM10「M」にしても、そのサウンドはしっかりロックバンドのそれになっている。 奥居のヴォーカリゼーションも文句なく素晴らしい。まさしく縦横無尽。「GET CRAZY!」や「へっちゃら」ではハスキーかつワイルドに、「それなりに いいひと」ではキュートに、「瞳だけはみつめない」や「M」では情緒感たっぷりに歌っている。プリプリはメロディー、サウンドも多彩だが、そこに彼女の表現力が加わることによって、その世界観がさらなる奥行きを増しているのは間違いない。 バラエティーに富み、何よりもポップさ全開である『LET'S GET CRAZY』がプリプリ快進撃の先兵になったことは今となっては十分にうなずけるが、このロックアルバムが未だ歌謡曲中心だった当時のシーンに分け入った事実が非常に興味深い。89年、彼女たちは50億円を売上げて年間売上順位は4位だったのだが、ベスト3は1位・松任谷由実、2位・工藤静香、3位・美空ひばりである。この頃のユーミンも工藤静香もロック色が強かったので、ことさらプリプリの音が異質というわけでもなかったが、それでも彼女たちがシーンを席巻していた頃の想いを馳せると何やら清々しい気持ちにもなる。 そして、以後、しばらくの間、彼女らは音楽シーンをけん引し続けた。そのことが90年代後半のバンド全盛期に直接的な影響を与えたかどうかは議論を待たねばならないところでもあるだろうが、客観的にデータを見る限り、プリプリの出現以降、歌謡曲が衰退しているし、プリプリの解散後、ロックバンドが音楽シーンの中心に躍り出ている。彼女たち自身が巨大な磁場であったと同時に、BOOWY、レベッカの偉業を受け継ぎ、後世に伝えるブリッジの役割を果たしたとも言える。プリプリが邦楽史上最強最高のバンドであることは、どうやら疑う余地はなさそうである。 TEXT:帆苅智之 ※BOOWYの2つ目のOにはスラッシュが入ります ※OKMusicでは毎週水曜日に『これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!』を配信中! 200を超える邦楽名盤の数々もアーカイブ! 是非、チェックを。

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