精神力が違い過ぎる…地獄を見ている苦労人とは天と地の差がある…朝乃山は”ちゃんこの味”がしみていない若い力士のよう【北の富士コラム】
今場所もいよいよ、佳境を迎えた。優勝は大栄翔と正代に絞られてきているが、3敗力士にも、かすかにチャンスは残されていた。 【表で詳しく】大相撲初場所・13日目の取組 その3敗で追っていた朝乃山が、天敵の照ノ富士に、いいところなしの相撲で4敗となり、完全に優勝争いから脱落が決まった。いくら天敵といえども、格下の相手に4連敗とは情けない。どちらが大関か、わかったものではない。 右の相四つというのが、朝乃山にとって不幸なことではあるが、伸び盛りの大関が、序二段まで番付を落とし、ようやく関脇まで戻ってきた照ノ富士に、手も足も出させてもらえないとは、合口が悪いではすまないだろう。体力も若さもすべての面で恵まれている朝乃山が、なぜ照ノ富士に勝てないのか。もし、相撲界に七不思議があるならば、一番の謎であろう。 もし、私が原因を挙げるとしたら、一番に精神力の違いだろう。一度、地獄を見ている苦労人と、大した壁に当たることなく、大関に昇進した両者では、天と地ほどの違いがある。昔は、若い力士に「ちゃんこの味がしみていない」と言ったものだが、まさに朝乃山は土俵の塩の苦さも、ちゃんこの味も足りていない。 二つ目は、稽古量の違い。照ノ富士は、良くはなったといえども、両膝に爆弾を抱えている。まだまだ不安は残っているが、稽古量は、朝乃山の何倍もこなしている。若い力士相手に、十数番で満足しているようでは、強くなる訳がない。「稽古はうそはつかない」ということだ。 まだ、言いたいことはあるが、キリがないので今回はこのくらいにしておこう。悔しかったら、稽古をすることだ。猛省せよ、朝乃山。悪い癖の、小言が続いて申し訳ない。 正代は、竜電に対し、積極的に攻めて2敗を守った。12日目は、相手に恵まれて、楽勝したが、13日目は隆の勝だ。胸を出すと、一気に押されるから気をつけるべきだ。 ところで、大栄翔は危なかった。明生にうまくいなされ、後ろを向かされてしまったが、奇跡的に回り込み、九死に一生を得た。それにしてもよく、残ったものだ。天はまだ、味方しているようだ。これで、11日目の正代も、この日の大栄翔も、負けた相撲も勝たせてもらった。条件は互角となった。 最後に笑うのは、はたして誰だ。私はどちらでも良い。早く終わってほしいだけであります。 それでは、メシにします。今夜は馬肉のすき焼き。赤みをサーッとにんにくじょうゆで焼いて、生卵で食べます。熊本の友人が、「桜鍋でも食べて、精力をつけるように」と送ってくれますが、今さら精力つけてどうするの? どうせ「枯れ木に肥やし」です。 (元横綱)
中日スポーツ