「このままいくと感染爆発に近づく」 8割おじさんが訴える政策の切り替え
新型コロナウイルスの感染拡大対策で、重要な役割を果たしてきたデータ分析。その立役者となったのが、「8割おじさん」こと、京都大学大学院医学研究科教授の理論疫学者、西浦博さんだ。【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】 【写真】人が消えた世界の観光地や巡礼地。新型コロナ以前と現在で比較 その西浦さんが、第1波の経験を聞き書きの形で記録した著書『理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!』(聞き手・川端裕人、中央公論新社)を12月9日に出版する。 11月25日に出版社主催で行われたグループ取材にBuzzFeed Japan Medicalも参加したので、詳報する。 まずは、現在進行形の流行をどう見ているかから。 ※取材前半は参加媒体の事前質問のうち共通する質問に答え、後半は各社1問ずつの個別質問に回答する形で行われた。読みやすいように構成を変えている。
すごいスピードで感染が拡大している
――今回の流行、危惧されてている「市中感染」となっていると見ていますか? どこで感染しているか全くどこか心当たりがない人はほとんどいないと思います。「インドアのあそこか」と感染者の方たちの行動歴を聞いていると想起されることが多いですね。 今は表立っては「クラスターの多様化」という風に表現をしていますが、これまでに連発して見られてきたハイリスクの場以外でも伝播が起こっています。 施設内が目立っていて、施設内で伝播が起きるということは、施設に行く人たちにまで感染が及んでいるということです。広い範囲で伝播が起こっているということなんだと思います。 ーー今後どの程度まで広がる恐れがありますか? どの程度まで広がるかは、どんな対策をするかによると思います。 指数関数的に感染者数が都市部で増加しています。 専門家が厚生労働省に助言する「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」が11月24日開催の会議資料2-3で出したように、11月7日までの推定感染時刻をもとにみたデータでは、同日付までに指数関数的な増加がみられているのは、関東では、東京、埼玉、千葉、神奈川、茨城。関西では大阪、京都、兵庫。それから愛知県です。 特徴的なのは、第1波、第2波といわれる流行のうち、第2波の時は1人当たりが生み出す二次感染者数である「実効再生産数(※)」は小さめでした。1.1とか1.2とかでゆっくり感染者数が増えていたのです。 ※1を切ると流行は収まり、1 を超えると感染拡大が続くとされる指標。 それが今回は、東京近辺や関東地方では1.5ぐらいに増えていて、関西では2に至るスピードですごく速く増えている。 北海道もやはりそれぐらいのスピードで増えていたように見受けられます。ですから今までと同じような対策で、ちゃんと1人当たりが生み出す二次感染者数が1を切れるかどうかは、対策のひとつのポイントになると思います。