4月に行われる統一地方選挙 現状と意義とは? 大阪大学准教授・砂原庸介
統一地方選挙の現状
2015年4月には、4年に一度の統一地方選挙が開催される。2014年末に行われた衆議院総選挙以来、初めて行われる安倍政権に対する全国的な評価であるとされ、「地方創生」というキーワードを掲げつつも滋賀県知事、沖縄県知事、佐賀県知事という3つの知事選挙で勝利を目指したものの敗北が続いた安倍政権にとっては、地方における支持を確認する重要な選挙であると考えられている。もちろん、新代表を選出して衆議院総選挙の大敗からの反転攻勢を狙う民主党や、大阪都構想を進めるために大阪府・大阪市議会での多数を確保したい維新の党にとっても重要な選挙となることは間違いない。
それぞれの地方自治体における選挙というだけではなく、全国的な意味付けも与えられそうな統一地方選挙であるが、実のところその統一性が年々減少していることは、あまり注目されていない。1947年にはじめて統一地方選挙が行われたときは、確かに全ての市区町村でほぼ一斉に選挙が行われたが、その後知事や市区町村長の辞職、議会の解散や市町村合併によって、統一地方選挙から離脱する地方自治体が増えているのである。
上の図は、1999年以降の各統一地方選挙の「統一度」を示したものである。知事選挙や市区町村長選挙についてみると(図1)、東京都の特別区を例外として、統一地方選挙に参加する地方自治体は3割を下回っている。しかも、市長や町村長では、この4回を通じて統一率は低下傾向が続いている。市町村長が辞職すると選挙のタイミングが変わるからである。市町村合併(平成の大合併)の影響も大きいが、合併が始まる前からすでに統一度は2割程度であり、合併がことさらに統一地方選挙からの離脱を促したともいえない。
議会選挙についてみると、都道府県・政令市・特別区といった自治体の多くが統一地方選挙に参加していることがわかる。都道府県では、金銭スキャンダルで「自主解散」したことがある東京都・茨城県と、アメリカの占領のために選挙開始のタイミングがずれた沖縄県以外は、すべての道府県が統一地方選挙に参加しているし、特別区や政令市についてもその参加度合いは高い。それに対して市町村議会、特に一般市の議会では、1999年に6割程度であった統一度が、2011年には4割程度に落ちており、これは市町村合併の影響が大きかったと考えられる。他方で合併によって「町」になったところは少ないために(複数の村が合併して「村」のままとなったところはない)、町村議会への影響は少ないし、都道府県や特別区はそもそも合併していないので全く影響がないのである。議会の場合、議員一人が辞めても選挙のタイミングが変わるわけではないので市町村合併が重要であり(※1)、それ以外では市区町村長への不信任決議を受けた議会解散くらいしか選挙のタイミングを変える理由がないのだ 。 (※1) 1999年の時点で統一度が6割程度になっているのは、昭和の大合併で選挙のタイミングが変わったことが大きい。 以上のように、統一の度合いから統一地方選挙を考えると、必ずしもすべての地方選挙を一斉にやっているわけではないことがよくわかる。都道府県知事・議会、市区町村長・議会のどれかひとつの選挙には参加する可能性が高いが、その内実はせいぜい道府県議会選挙を一斉にやっているという程度であり、特に市議会については「統一」という言葉のイメージほどには選挙が行われないのが実態なのである。