J3も一緒に味わった愛する大分トリニータとの別れ…33歳三平和司、新天地での誓い「また好きになれる」
Jリーグきっての元気印・三平和司の新天地がヴァンフォーレ甲府に決まった。背負う番号は「9」。 【この記事の写真】J3優勝を喜ぶ三平、笑いをさそうゴールパフォーマンス(全3枚) 2020年12月。プロ11年間の大半を過ごした愛するクラブ、大分トリニータとの別れは突然やってきた。 J1第31節のベガルタ仙台戦を控えた練習の後、三平が呼ばれたのは大分の本社にある面談室。そこには、榎徹社長と西山哲平GMが待っていた。 「厳しいことを告げなければなりません」 そんな前置きの後、来季の契約を結ばないという事実を告げられた。 「満了」という言葉を聞いた瞬間、三平の頭は真っ白になった。思わず「なぜなんですか? 理由を教えてください」と迫る。しかし、西山GMからその意図を詳しく告げられてみると、次第にクラブに対する感謝の気持ちが大きくなっていった。 「8年間プレーさせてくれてありがとうございます。J3で優勝したことが凄く嬉しかったし、いろんな思い出を刻むことができました。本当にありがとうございました」 無意識のうちに口にしたこの言葉に驚いたのは、他ならぬ三平本人だった。 「本音を言えば、『これだけ大分のために頑張ってきたのだから、ふざけんなと怒りを表してもいいんじゃないか』と思った自分もいた。でもその反面、自然と感謝が溢れ出てたんです」
「僕の生き方は間違ってなかった」
自宅へ帰る車の中、自らの回答を「単なるお人好しなんじゃないか?」と思った時間もあった。でも、どんなに考えても、悔しさより大分という街とトリニータというクラブへの愛情が勝った。怒りの感情がない自分がそこにいた。 「(自分の)満了という事実に『おかしいですよ! 』と怒りを露わにするチームメイトがいたり、プレスリリースを受けて『さんぺーちゃんのいないトリニータはトリニータじゃない』、『悲しすぎるし、寂しすぎるよ』とかサポーターの声を聞いて、あのとき、クラブに感謝を伝えてよかったなと思った。トリニータのためにやってきて本当によかったし、僕の生き方は間違ってなかったのかなと」 残酷な宣告だったが、本当の自分の気持ちに触れることができた。ただ一方で、次へ向けて踏み出し切れていない自分もいた。それを感じたのは宣告の翌日の練習のことだった。 仙台戦へ向けた練習。集中力を高めていかないといけない状況において、チーム全体の雰囲気がどこか緩い。そんなチームを見た片野坂知宏監督は「こんなんじゃダメだ!」と怒りを露わにした。この瞬間、三平はハッとした。 「トリニータの良さは、明るいところは明るく、締めるところは締める。そこで(チームの雰囲気が)緩いと感じたら、自分から『もっとやろうぜ』と声をかけていた。でも、そのときは声を出せなかった。いくら契約満了がショックだからといっても、チームのためにやらなくちゃいけないことはある。僕が言うべきだったのに、監督に言わせてしまった。それに悔しさと情けなさを感じたんです」 サッカー人生において、契約満了を突きつけられたことは初めてのことだったが、それによって今まで積み上げてきた自分を否定するようなことをしてはいけない。その日以降、三平は改めてチームのために戦うことを決意した。 「本当に自分自身と向き合えました。僕にとって一番のモチベーションは人の笑顔なんです。昔から人を笑わせることが大好きだったけど、プロになっていろんな経験をするうちに、人の笑顔を見ることで自分が頑張れるようになっていった。サッカーで言えば、点を取ったとき、勝ったときの周囲の笑顔。チームを引き締めるときも、最後に笑顔を引き出すことで空気にメリハリが生まれる。それに気づくことができたからここまでプロ生活を送れてきたし、それはこれからも変わりません」