ブランド価値の向上が日本企業の課題 vol.3
ブランド価値の向上が日本企業の課題 vol.3 原田 将(明治大学 経営学部 教授) 近年、ブランド価値の向上を経営の中心とするブランド価値経営にますます関心が高まっています。しかしながら、日本企業のブランド価値は、世界的に見ると低いままです。グローバル競争が激化する現代、ブランド価値を向上させることは日本企業の大きな課題になっています。 ◇自分たちにとっての正解のブランド戦略を考える では、どうすればブランド・コミットメントを高めることができるのか。そして、ブランド価値経営を実践できるのか? まず、過剰な技術志向から脱却することです。もちろん、性能や品質の高い製品を提供することは必要です。それに加え、そうした製品を使うことで喜びや楽しさを感じてもらえるようにすることも必要です。 ブランド・コミットメントを高めた事例として、自動車メーカー・スバルのアメリカ市場での取り組みがあります。 スバルは、アメリカでの販売において、当初、4WDの技術や走破性の高さなどをセールスポイントとしていました。 しかし、スバルは、車の性能を訴求するのではなく、スバル車を所有する喜びやスバルとオーナーとのつながりを訴求する戦略へと変換しました。これが「LOVEキャンペーン」と呼ばれるものです。 すると、それまではスペックという客観品質で終わっていた車の性能が、大切な人との楽しい時間を創り、守ってくれる安心感という知覚品質となり、スバルに対する良好なブランド連想へと昇華していったのです。もちろん、それは、車の販売台数の上昇へと繋がっています。 ブランド・コミットメントを高める方法は、業種や製品によっても異なりますが、経営者をはじめ、開発者や営業担当者、広告代理店の担当者など、そこに関わるすべての人たちが、その方法を考えなくてはなりません。したがって、ブランド価値の向上は、マーケティング部門だけの課題でなく企業全体の課題、すなわちブランド価値経営となるのです。 いま、様々な企業が、ブランド価値経営に取り組もうとしています。まず、経営陣がブランド戦略の方向性を立て、それを全社員と共有することが必要です。開発には開発の、営業には営業の、ブランド戦略において担うべき役割があります。各部門が、それぞれの立場から、共有する戦略について考え、一貫性のある取り組みを継続していくことが、成功への鍵になると思います。 ※取材日:2020年4月
原田 将(明治大学 経営学部 教授)