山鹿市産コウゾ、万博のイベント広場に植栽 終了後は和紙原料として再利用も 「名誉」と生産者の古川さん
来年4月開幕の2025年大阪・関西万博で、会場に設けられる小規模イベント広場「ポップアップステージ(北)」に、和紙原料の山鹿市産コウゾが植栽される。作っているのは鹿北町の農業、古川利治さん(82)と安子さん(78)夫妻。山鹿灯籠に使う専用和紙の原料も手がける夫妻は「大変名誉なこと」と開催を心待ちにしている。 広場は音楽、トークイベント、お祭り開催などを想定し、万博会場4カ所に設置される。北の広場の設計を担当する建築家の佐々木慧[けい]さん(37)=福岡市=が現地の植栽を考えていたところ、知人の紹介で富山県の和紙職人、川原隆邦さん(43)と出会った。 かつて熊本県内有数の和紙の産地だった鹿北町でもコウゾを栽培するのは古川夫妻だけ。同町の和紙づくりは、加藤清正が朝鮮半島から連れ帰った紙すき職人「慶春」が技術を伝えたとされる。そうした背景に興味を持ったという川原さん。親交のあった山鹿灯籠師の中村潤弥さん(35)から聞いた話を思い出し、山鹿市産コウゾを提案した。
広場には森から切り出した丸太材を並べ、万博終了後は建材として再利用する予定。「会場に植えた植物も廃棄したくなかった。コウゾは刈り取った後に和紙として使えるし、建築のコンセプトにも合致している」と佐々木さん。 今年夏、川原さんは古川さんから120株のコウゾを譲り受け、現在、手元で育てている。年明けには古川さんらと会場に植栽。会期中の半年間で、2、3メートルに成長するという。 川原さんは万博の迎賓館に飾る和紙のアート作品も担当。11月27日には使用するコウゾを収穫するため、佐々木さん、中村さんと古川さん宅を訪問した。古川さんは「万博には世界中から多くの人が訪れる。日本の和紙文化を知ってもらうきっかけになれば」と話している。(本田清悟)