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米経済の雇用と所得の改善を楽観的に見られない「いくつもの理由」

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ダイヤモンド・オンライン

 7月2日に公表された6月分の米雇用統計で非農業部門(製造業やサービス業など)雇用者数は前月から480万人も増えた。 【この記事の画像を見る】  新型コロナウイルスまん延で経済活動の停止を余儀なくされた今年3月は137万人減、4月は2069万人減と、この2カ月の雇用の喪失は米国の生産年齢人口(16歳以上)の1割弱に及ぶという異例な事態となった。  その落ち落ち込みと比較すると、5月(270万人増)と6月の回復で3割ほど落ち込みを取り戻したことになる。  だがこれが米経済の本格回復を示すものかは、疑問だ。 ● 雇用の落ち込み、3割回復 増えたのはパートタイマー  今回の雇用統計結果を見て、コロナショックによる米国の雇用の落ち込みをわずか2カ月で3割も取り戻せた、と考えるべきか、それとも、まだまだ足りないと考えるべきか――。

 雇用者数の数だけで言えば、大幅に取り戻したという評価になるのかもしれない。  というのは、2008年のリーマンショックを機にした世界金融危機直後のボトムから雇用者数が回復したペースと比較すると、ここ2カ月の回復はその2倍以上のペースだからだ。  金融危機は資金の確保が難しくなって事業活動が行き詰まった企業が大幅に増えた大不況だったのに対し、今回はウイルスの感染拡大に対応した営業規制や休業が原因で、いわばウイルスまん延の事態さえ落ち着けば雇用や経済の回復は早くてもおかしくないといえるのかもしれない。  しかし、詳細に見ると、雇用の回復にはどうしても楽観的になれない3つの隠れた要因がある。  その1つは、この5~6月の雇用者増数が2カ月合計で878万人だったうち、296万人はパートタイマーが占めたことだ。  パートタイマーとは週間の労働時間が35時間未満の就業者だ。フルタイムの就業者と生産性にどれだけ有意な違いがあるかは定量的には測りにくいものの、労働時間はフルタイムの就業者より少ない。  国全体の生産や所得が伸びる上では、働き手の数、1人当たりの労働時間、時給の3つの要素がすべて増加することが加速の条件だが、パートタイマーがけん引する雇用増では、1人当たり労働時間と時給は伸びにくくなる。  またこの2カ月で増えたパートタイマーの内訳を見れば、本来はフルタイムで働くことを希望するのだが、経済的な理由(企業の人件費抑制や雇用のミスマッチなど)でパートタイマーしか職を得られなかったという人は連続で減っているのに対し、パートタイマーを能動的に選んで職に就いている人が478万人も増えている。  その理由は例えば子育てや介護、就学、職業訓練の時間を割くため、などがある。  経済活動の再開が6月中に順次進み、サービス業では働く人の数が増え、人の移動が少しずつ増えてきていることは、街中を少し歩くだけでもわかる。しかし営業再開のペースはまだまだ慎重で営業時間もかつてと比べると短い。  こうした状況を見れば、雇用者が増えたといっても、少ない営業時間なら働けるし働きたいという人のニーズが満たされた、だけと解釈すべきだろう。働きたい人がフルには働いて、生産やサービスなどが増え、全体の所得が増えるという状況ではない。  雇用者数の増加ペースが印象付けるようなV字回復が、マクロ経済全体の所得の増加にも見られるかといえば必ずしもそうではないということだ。

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