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手術ロボに「触覚」 患部の硬さや位置、より精密に

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NIKKEI STYLE

外科手術へのロボットの活用が広がっている。医師が手術器具を正確に動かせるようロボットが支援、安全性を高める。患者の体への負担も軽くでき入院日数などを減らしやすい。外科手術の水準を底上げする“助っ人”として活躍の場が増えそうだ。  「患者には傷の少ない手術ができ、医師には危ない器具操作をしないよう助けてくれる」。埼玉医科大学国際医療センター(埼玉県日高市)の小山勇名誉病院長は手術ロボットのメリットを話す。2019年から大腸がんや子宮がんの手術に使い始めた。 患者の腹部に小さな穴を複数開け、その穴から器具を挿入する内視鏡手術が対象だ。ロボットアームに内視鏡や治療器具を取り付け、少し離れた医師がディスプレーを見ながら手元のハンドルで操作する。米トランスエンテリックス社の「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」と呼ぶロボットで、同院がアジア地域の医療機関で初めて導入した。 内視鏡を使う手術は開腹手術に比べて患者の体への負担を小さくできる。ただし医師にとっては開腹手術よりも技術的に難しい。視野が狭くなり器具を動かせる範囲も限られるため、組織や血管を傷つけやすい。 そこで患者の体への負担を抑えつつ手術の安全性も高めるのがロボットの役割だ。医師はディスプレーに映る高精細の内視鏡映像を見ながら、手元のハンドルで器具を狙った位置に動かす。人間の手では難しい緻密な操作ができ「経験の差によらず精度や再現性の高い手術ができる」(小山氏)のが強みだ。がんを確実に切除したり出血量を減らしたりしやすい。 ロボットを使う手術は日本では約20年前に始まった。米インテュイティブサージカル社の「ダビンチ」が数百台導入され、前立腺がんなどの内視鏡手術に使われてきた。18年に公的保険の対象が胃がんや肺がんなどにも広がり、症例数は増えている。 一方、ここにきてダビンチの主要特許が切れたことで、メーカーの新規参入も相次ぐ。センハンスもその一つ。すでに数十カ国で利用が始まり、日本では19年7月に保険が適用された。 センハンスの基本的な仕組みはダビンチと同じだ。新たな特長は「触覚を感じられるなど従来の内視鏡手術に近い感覚で手術できる」(小山氏)こと。臓器の硬さや糸の張り具合などを手元のハンドルに伝える仕組みを搭載した。従来の内視鏡手術と太さや使用感が同じ器具が使える。医師の目の動きでディスプレーに映る内視鏡映像を切り替えられるようにもした。 ロボットの利用は整形外科領域にもじわり広がっている。日産厚生会玉川病院(東京・世田谷)は昨年、手術用ロボット「メイコーシステム」を導入した。米ストライカー社製で、股関節や膝関節を人工関節に置き換える手術に使う。19年6月に股関節、同年7月に膝関節の手術に保険が適用された。 股関節の手術では骨盤と大腿骨のつなぎ目の骨や軟骨を取り除き、金属やプラスチック製の人工関節に置き換える。メイコーシステムは骨を削る器具などをロボットアームに装着。患部の位置を赤外線で追跡しながら、術前の計画と器具の動きが精密に一致するようにロボットアームが動く。 例えば骨を削る場面では、医師が器具を患部に近づけるとロボットアームがぐっと力を加えて最適な位置に導く。器具を押し込んで骨を削る際も軸が自動的に固定されるため誤差なく削りやすい。手術の精度が上がるため、人工関節と骨が隙間なく密着するという。玉川病院の松原正明副院長は「手術計画さえ立てればロボットに“お任せ”に近い感覚だ」と話す。 患者側にもメリットが大きい。「術後に痛みを感じにくいため、早期にリハビリを始めて退院できる」(松原氏) ロボットは「手術のデジタル化をもたらす」(埼玉医科大学国際医療センターの小山氏)側面もある。ロボットに集まるデータや人工知能(AI)を駆使すれば「熟練医の優れた手術を再現できるようになる」(同氏)からだ。医師の経験に頼らず安全な手術ができれば、直面する外科医不足への有効な対策になる。 離れた場所にあるロボットを操作する「遠隔手術」も現実味を帯びてきた。すでに日本外科学会が指針作りに着手。玉川病院の松原氏は「5G」など次世代の高速通信技術が普及すれば「遠隔でも質の高い手術ができるだろう。医師の働き方や役割の見直しにもつながる」と期待している。 ◇  ◇  ◇

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