中学受験、3兄弟の末っ子だけが不合格。複雑な母の心を救った三男の言葉とは【体験記】
■合格なら黄色、ダメなら赤色のハンカチをベランダに… 入試が終わり、合格発表当日。Tくんは登校日でしたが、一刻も早く結果が知りたいから、帰り道でわかるように、マンションのベランダに、合格なら黄色、ダメだったら赤色のハンカチを出しておいて欲しいと言いました。いつも友達と一緒に帰ってくるので、そこで結果を知ることは心配でしたが、本人がそうしてほしいというので、やむなく学校に送り出しました。 程なく届いた結果は不合格……。お母さんは落胆し、悲しみやくやしさ、また赤いハンカチを見た時の息子の気持ちを考えると切なさも込み上げてきて、やるせない気持ちでいっぱいだったと言います。 しかし当の本人は、友達と「不合格」という事実を共有しながら帰ってきて、落ち込む様子もなく、一見ヘラヘラしていたようにも見えました。国立中学のほかに、1校受けた私立中学からは合格をもらっていたため、両親は当然そちらに行く手続きをしようとしていた矢先、Tくんに「公立中学に行く!」と宣言されました。それは、第1志望校に不合格だったとわかった帰り道、「……ってことは、一緒の中学に行けるってこと?!やった~!嬉しいよ」と言ってくれた仲間の存在が大きかったようです。 ■「トップの県立高校に行って見返してやるからさ!」 とはいえ、進路決定は人生の岐路ですから、小学生の感覚だけで決定していいのか、両親は寝ずに考えたといいます。Tくんともゆっくり時間をとり、これからどうしていきたいかを一緒に考えて、どんな中学生活を送りたいかを確認したのだそう。本人は、自分が勉強をしなかったから不合格だったということを、遅ればせながら理解し「塾は好きだからこのまま通わせてほしい。勉強をしてトップの県立高校に入って見返してやるからさ」と笑いました。 すぐに前を向いて体勢を整えたTくんとは裏腹に、「同じクラスから受験して合格できなかったのは自分のところだけだった……」とか「公立中学の説明会にいくときモヤモヤした気持ちになった」とか親のほうが気持ちの切り替えができなかったようです。けれども、公立中学の入学式、代表の挨拶を自ら買って出たTくんの「心機一転、この場所で精一杯頑張っていく」という宣言を聞いた時、息子のポジティブマインドにたくましさと成長を感じ、この子は大丈夫、と思えたそうです。