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中国が太平洋のど真ん中に乗り出して建設する人工島

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JBpress

 (北村 淳:軍事社会学者)  太平洋のど真ん中に広がる島嶼国キリバス共和国(Republic of Kiribati)は、世界的気候変動の影響で海面水位が上昇しているため、やがては国土を形成する島嶼環礁の大部分が水没する運命にある。 【地図】太平洋のど真ん中に広がるキリバス共和国の島々  そこでキリバスでは、島嶼環礁にかさ上げ埋め立て工事を実施して、水位上昇によっては水没しない「人工島状態」にしてしまう動きが具体化しつつある。人工島の建設工事を手掛けるのは、南沙諸島に短期間で8つもの人工島を生み出した、「人工島建設にかけては世界最強」の中国である。 ■ 日米が死闘を繰り広げたタラワ  キリバス共和国は太平洋中部の広大な海域に点在する33の島嶼環礁からなる島嶼国家だ。国土面積は狭小であるが、排他的経済水域は極めて広大であり、その水域の面積は世界第3位である。  首都はタラワ(タラワ環礁)にある。タラワ自身も24の小島から形成されている環礁であり、環礁の最高地点は標高3メートルである。タラワ環礁のバイリキ島がキリバス共和国の政治の中心となっているが、国会はアンボ島にある。タラワ環礁の中で最大面積のボンリキ島には、ボンリキ国際空港が設置されている。経済活動の中心地は、港湾があるベシオ島である。

 タラワでは、かつて太平洋戦争中に日本軍と米軍の間で激しい戦闘が行われた。  1943年11月20日から23日にかけて、日本軍が待ち受けるタラワ(ベシオ島)に、猛将ホーランド・M・スミス少将率いる1万8000名のアメリカ海兵隊(第二海兵師団が中核)が、日米戦初の大規模強襲上陸作戦を敢行した。  日本軍の守備隊は、ベシオ島に地下陣地を張り巡らせ要塞化してタラワ防衛態勢を固めていた。その陣容は、海軍佐世保第7特別陸戦隊と海軍第3特別本拠地隊を中心とした兵2636名、戦車14両、陣地構築などに動員された設営隊の軍属およそ2200名であった。  一方、タラワに上陸するアメリカ海兵隊は、アメリカ海軍第5艦隊の護衛空母5隻、旧式戦艦3隻、重巡洋艦2隻、軽巡洋艦2隻、駆逐艦22隻、輸送揚陸艦18隻、掃海艦2隻で形成された上陸侵攻任務艦隊に乗船していた。  タラワでは、巧妙に構築された地下要塞に日本側の海軍陸戦隊の精鋭部隊が立てこもっていた。そんなタラワに対する急襲作戦は、米海兵隊に大損害(戦死1009名、戦傷2101名、このほか護衛空母1隻が撃沈され将兵687名が戦死)をもたらした。しかし米軍にとってタラワは、多大な犠牲を払っても手に入れねばならない戦略要地であった。  日本軍守備隊は頑強に抵抗したものの、島嶼防衛の鉄則(本コラム2014年8月24日「いちど取られたら取り返せない、心しておくべき離島奪還の難しさ」、拙著『シミュレーション日本降伏』PHP研究所)どおりに海洋戦力(艦艇や航空機)の援護を受けられなかったことで壊滅した。日本軍将兵は、負傷して捕虜となった17名以外の2619名が戦死し、軍属のほとんども戦死した。米側の捕虜となったのは129名の朝鮮人労働者だけであった。  タラワの激戦から77年経過し、現在はタラワを含むギルバート諸島がキリバス共和国の一部として独立国家を形成している。政治環境は一変したものの、タラワの地理的位置が変動したわけではない。したがって現在でもタラワが太平洋軍事戦略において極めて重要な戦略要地であることには変わりはない。

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