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海底下750メートルに生息する微生物群集が発見される

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ニューズウィーク日本版

──南西インド洋海底下750メートルの海洋下部地殻から採取

海洋底を構成する「海洋地殻」は、玄武岩や斑糲岩(はんれいがん)からなり、大陸地殻に比べて密度が高い。生物が生息するために必要となる炭素やエネルギーが極めて少ないこの極限環境で、どんな微生物がどのようなメカニズムで生息しているのかについては、これまでほとんど解明されていなかった。 ● 動画:地球の地下深くには生物圏がある ■ 南西インド洋海底下750メートルの海洋下部地殻から採取 米ウッズホール海洋研究所(WHOI)の研究チームは、2015年11月から2016年1月までの「国際深海科学掘削計画(IODP)第360次研究航海」に参加し、南西インド洋海嶺アトランティス海台で海底下750メートルの海洋下部地殻から岩石試料を採取した。海洋下部地殻は、通常、上部地殻に閉じ込められており、調査しづらい領域だが、この地点は、地殻活動によって海洋下部地殻が海底で露出しているため、試料を採取しやすいとされている。 研究チームはこの岩石試料を分析し、極限環境微生物であるクロオコッキディオプシス属やシュードモナス属など、多様な微生物からなる微生物群集を発見した。一連の研究成果は、2020年3月11日、学術雑誌「ネイチャー」で発表されている。 研究チームが酵素活性や脂質バイオマーカー、マーカー遺伝子、顕微鏡検査でこの岩石試料を分析したところ、1立方センチメートルあたりの細胞数が2000未満と細胞密度は非常に低く、不均一に分布していた。また、伝令RNAを分離し、代謝プロセスを指示する遺伝子の発現を分析した結果、これらの微生物は、多様な配列の遺伝子を発現していることがわかった。 ■ 海底下での炭素循環が広範囲に及んでいる 極限環境微生物の多くは、無機化合物のみをもとに有機化合物を自ら合成して生育する「独立栄養生物」であるが、この微生物群集では、分子間結合の強い「多環芳香族炭化水素」を分解したり、エネルギーを生産・貯蔵するための化合物をアミノ酸の再生によって生成するといった「従属栄養」のプロセスも認められている。つまり、これらの微生物は、極限環境に順応し、海底下の流体や海水の循環で運ばれる有機炭素源や無機炭素源をエネルギー源に結合させることによって、必要なエネルギーを得ていると考えられる。 この研究成果は、海底下での炭素循環が、これまで考えられてきたものよりも広範囲に及んでいる可能性を示唆している。研究論文の責任著者であるウッズホール海洋研究所の微生物学者ヴァージニア・エジコウム博士は「海洋下部地殻を含め、深部地下生物圏の大きさを鑑みれば、たとえ代謝速度が非常に遅いとしても、相当量の炭素に匹敵する可能性がある」と指摘している。

松岡由希子

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