イラク緊迫 オバマ政権の「イラク出口政策」は危機的状況に
さらに、2014年5月には、「アルカイダは相当部分掃討した」として、アフガニスタンからの米軍撤退期限も2016年末に設定することを発表しました。このアフガン撤退の2016年末という日程は、オバマ政権の8年間のフィナーレの時期です。「イラク・アフガン戦争の完全終結」は、オバマ政権の華々しい最大の遺産(レガシー)がとなるはずでした。
後世の「オバマ」評が歪む可能性
これに対して、ISISはシーア派色の強いマリキ政権に反発するスンニ派の住民も味方につけ、勢力を拡大させてきました。イラク情勢がさらに不安定化すれば、米軍の再び軍事介入する可能性も高まります。アフガン撤退を遅らようとする意見も既に次第に大きくなっています。オバマ政権の「イラク・アフガン戦争の完全終結」までのこれまでのシナリオが崩壊してしまうのは、オバマ自身の誤算に終わるだけでなく、後世の歴史家が評価する「大統領・オバマ」像も大きく歪んでしまうでしょう。 (前嶋和弘/上智大学総合グローバル学部教授)