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ウクライナの伝統 豪華な花の冠の人気が復活した理由

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ナショナル ジオグラフィック日本版

結婚式や夏祭りで女性たちの頭を飾る「ヴィノク」は、ウクライナ国民の伝統と誇り

 花、鳥の羽、麻糸、貝殻、ビーズ、時には箔やワックスまで用いて、ウクライナの芸術家ドミニカ・ダイカ氏が作るのは、「ヴィノク」と呼ばれるウクライナの伝統的な花の冠だ。 ギャラリー:100年前の写真で見る世界の民族衣装、帽子をかぶる人々 写真45点  純潔と多産の象徴として、ウクライナでは昔から少女や若い女性が祭りや結婚式で頭に花の冠を載せた。その起源は、10世紀に東欧のスラブ世界にキリスト教が伝わる以前の異教の伝統にあるとされている。ウクライナでは今、この花の冠を含め、伝統的な文化を見直す動きが高まっている。誇りある民族の歴史を反映し、明るい未来への希望を込めて現代風にアレンジされた民族衣装は、今では日常生活の中にも溶け込んでいる。  ヴィノクは、7月上旬に祝われる「イワン・クパーラ」という祭りで見られる。これも元々は異教徒の祭りだったが、それが後にキリスト教の洗礼者聖ヨハネの祭りに結び付けられた(ヨハネはスラブ語でイワン、英語でジョンのこと)。ウクライナだけでなく、ロシア、ポーランド、ベラルーシでも祝われている。人々は焚火の上を飛び越え、女性は花やその他の植物で冠を編み、それを川に流して恋愛運を占う。最近では、芸術祭や音楽祭でも花の冠が見られるようになり、さらにそれはミュージックビデオやソーシャルメディアの投稿にまで広がっている。

古い伝統から現代アートへ

 ダイカ氏は、ウクライナの町リヴィウにあるトレッティピビニ・ワークショップで、スタイリストやメイクアップアーティスト、フラワーアーティストらとともに、ひときわ豪華で美しいヴィノクを制作する(トレッティピビニとは、ウクライナ語で「第3の雄鶏」という意味だ。ダイカ氏によれば、朝3番目に鳴いた雄鶏、つまり新しい一日の始まりを象徴するのだという)。デザインは、美術館に所蔵されていた古い写真をデジタル化したものや、アーティストたちが集めた古い家族写真が基になっている。 「昔から使われてきた材料を使っています」。ダイカ氏は、掘り起こされた歴史に新たないのちを吹き込み、「現代の写真を通してウクライナの民族衣装を広く知ってもらい、古い写真が与えるビンテージとか色褪せたイメージを払拭したいです」と話す。  彼女の作品を頭に戴いたモデルの誰ひとりとして「冷たく、世離れした」雰囲気でカメラに向かう者はいない。「身長や体型、年齢に関わらず、女性はすべて美しい。私たちの写真は、それを見せています」。ダイカ氏は、過去の伝統を色彩あふれる現代アートとしてよみがえらせ、人々にウクライナ人としての誇りを取り戻してほしいと願う。「この美しさを、たくさんの人に見てもらいたいと思っています」  美しい刺繍が施されたシャツやドレスなどの民族衣装とともに、ヴィノクの人気は「最近ますます高まっている」と話すのは、ウクライナ人とポーランド人のバンド「ダガダナ」のメンバー、ダガ・グレゴロウィッツ氏だ。ダガダナは、ダイカ氏のヴィノクを衣装に取り入れている。「長いこと、私たちは自分たちの衣装スタイルを模索していました。バンドのメンバーは隣国同士のポーランドとウクライナ出身で、私たちの音楽はこのふたつの国の伝統的な民族文化を融合させたものです。これに、ジャズ、エレクトロニカ、ロック、即興演奏といった現代的な要素も取り入れています」  そんな時、ダイカ氏の創作物に出会った。「ずっと前からこうなる運命にあったように思えます。私たちの文化を世界に伝え、私たち祖国の女性たちの物語を伝えるために」。ダガダナの衣装は世界中の音楽祭で披露され、人々はポーランドとウクライナの豊かな文化に魅了されたと、グレゴロウィッツ氏は言う。  ウクライナ国内では、ヴィノク人気のおかげで生花店が繁盛している。首都キエフで生花店を営むアナスタジア・プルシュコ氏は、赤ちゃんの洗礼式や誕生日パーティの招待客へのギフト、レストランの開店祝い、ファッションショーのアクセサリーの注文が増えていると話す。プルシュコ氏は、ヴィノク作りのクラスも指導している。  中でも一番多いのが、結婚する花嫁からの注文だ。「ウクライナのルーツと伝統ですから。それに、ヴィノクは刺繍入りのシャツやドレスにとてもよく合います」。刺繍が施されたウクライナの伝統的なシャツは、ヴィシヴァンカと呼ばれる。  プルシュコ氏は、ヴィノクの衣装合わせを必ず自分でするようにしている。「リボンやタイを選ぶ段階から関わらないと、冠のボリュームが決められません。冠の傾き加減も重要です。前方または後方に傾けるか、それとも頭のてっぺんに載せるかによって変わってきます」  ヴィノクには、科学、神秘、そして芸術の側面がある。植物が何を象徴するのかだけでなく、冷凍されたり乾燥させたりした場合、または「水なしでどのように変化する」かまで知っておく必要がある。生花を長持ちさせるために、ブドウ糖を染み込ませたコットンボールをアレンジメントにテープで貼り付け、花に吸わせる。ドライフラワーは脆く崩れやすいが、糊で簡単に貼り付けられる。冠自体、見た目は緩やかに、しかし花嫁がダンスしてもずれないように、しっかり固定する必要がある。そして、「花が肩を寄せ合って互いを支えているかのように、隙間なく並べます」と、プルシュコ氏は説明する。  プルシュコ氏や他のアーティストたちによる作品は変わっても、それらが意味するものは歴史の中に深く根付いている。「結婚式の数日前に、花嫁が涙を見せたのです。私は花を輪に編んでいました。リボンの下に茎を差し入れていた時に、彼女は本当に結婚するのだと気づいたようです。胸が熱くなる思いがしました」

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