計量失格で資格停止の比嘉大吾が約2年ぶり復帰戦TKO勝利も現役続行白紙の衝撃発言…具志堅会長は困惑。その真相とは?
試合後、両目の上を無残に切ったブエナオブラは、15戦目にして初のTKO負けに「ボディとアッパーがベリーストロングだった」と嘆いた。だが、「バンタムに階級を上げたことでスピードは感じなかった。パンチ力に関しても、おそらくフライ級では強かったと思うがバンタムでは、それほどでもなかった」と階級の壁をほのめかした。 比嘉自身も「ただ体力がきつかった。まず体力を戻さないとバンタムがきついかどうかもわからない。練習より試合がきつかったのは初めて」とバンタム級の感触をつかむ前の段階だったという。 悩める比嘉は、今後、どこへ向かうのだろう。 WBC世界バンタム級で7位にランキングされている比嘉が、4月に3団体統一戦を戦う”モンスター”井上尚弥(26、大橋)が君臨しているバンタム級、或いは、さらにフィジカルを鍛えてスーパーバンタム級に上げて世界のベルトを再奪取するには課題は山ほどある。比嘉が腰を据えてレベルアップするには、心技体が揃わねば難しい。 「2年休んで、またかと思われるかもしれないが、ここでちゃんと一回、(気持ちを)整理しておかないと、やってもチャンピオンにはなれない。自分に期待してない自分もいる」 そのことを一番わかっているのは比嘉本人である。 「東京に18歳で出てきて世界王者になる夢を追った。あの闘争心というものが、今の自分にはない気がする。それは見ている人にも伝わるだろうし、それがない限り、チャンピオンになるのは絶対無理。自分でもわかっているし、みんなもわかっている」 比嘉は悲観的だったが、再起戦に闘争心は見えた。 最初から最後まで、痛々しいほど力みながら、渾身のパンチを振り回し続け、彼は目の前にいる相手を倒そうとしていた。 ――闘争心はあったと思う。それでも現役続行は白紙なのか? そう質問すると比嘉は、「わかんないですね。自分しかわからないことだが、自分もわからない。謎です」と言葉を濁した。 そして、「僕は違う道で成功できそうですか? 何をやろうか…何もやることないけどね」と自虐的にメディアへ逆に問いかけた。 リング上ではアナウンサーがファンに大吾コールを求め、満場のファンが、「大吾!大吾!」とシュプレヒコールした。気持ちよさそうにリズムをとった比嘉は、「最高! 辰吉丈一郎さんみたいな気持ちになった」と、ご満悦でリングを降りたが、「大吾コールが最高であって、リングは最高ではなかったんです」とポツリ。そのファンの声も、比嘉の背中を次への戦いに押すものにはならなかった。 比嘉の才能は、ボクシング界が失うべきではない宝である。約2年ぶりにリングに戻ってきた沖縄出身の悩めるKOマシンは、どんな決断を下すのだろうか。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)