スマホでつぼを作れる? “バーチャル陶芸”を体験 古代ギリシャの名品を再現するまで
「Experiments with Google」は、Googleが人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新技術の可能性を示すために、実験的な応用例を紹介するショーケースだ。膨大なコンテンツを公開しており、その多くはスマートフォンやPCで試せる。 【画像】バーチャル陶芸で作ったつぼ。初めてにしては上出来だろう。 この記事では、多種多様な応用例の中から興味深いものをピックアップ。ライターの筆者(佐藤信彦)が実際に遊んだ体験レポートを通して、裏側にある技術を解説しつつその可能性を探る。 読者の皆さんも、ぜひ自分の手で試しながらその仕組みを学んでもらえたらうれしい。きっと、最新技術の魅力に気付くはずだ。
古代の傑作を“手作り”できる バーチャル陶芸「3D Pottery」
今回は立体作品に挑戦する。試すのは“バーチャル陶芸”で遊べるWebアプリケーション「3D Pottery」だ。 3D Potteryを使えば、PCやスマートフォンの画面上で陶芸を体験できる。粘土の塊が「ろくろ」の上でクルクル回転しているので、そこから成形、絵付け、焼き、という一連の工程を仮想的に体験できる。 簡単に陶芸を体験できるが、自分の好きな形の陶磁器は作れない。3D Potteryは、お題を手本にして似た形のつぼを作るコンテンツだ。お題は、世界各地のさまざまな時代の傑作を集めている。そして最後に、どれだけ上手に作れたか点数で評価される。
粘土を成形して絵を付けて――スマホで陶芸体験
それでは早速、「LAUNCH EXPERIMENT」を押して始めてみよう。 最初のお題は、古代ギリシャのテラコッタ(粘土の素焼き)だ。教科書で見た気がする。2つの取っ手に施された細かい模様や、側面に描かれた人の姿が緻密で美しい名品だ。バーチャル体験とはいえ、これほど凝ったものを作れるのだろうか。 少し不安になったが、心配はなかった。最初に表示されたのはあくまでもオリジナルで、実際に作るのはオリジナルを簡素化した見本だからだ。見本の方は、オリジナルの雰囲気を踏襲しつつもシンプルな作品なので、作れそうな気がする。 作業の第1段階は、画面右上の見本を参考に、丸い粘土からつぼの形を作り出す。左下ある操作ガイドに従って粘土の中央をへこましていくと、意外と簡単にそれらしい形になった。3Dグラフィックスで表現されていて、内部を見ながら作業できるので加工しやすい。 大まかな形ができたら、今度は外側を絞るようにして“くびれ”を作り、全体の形を整える。見本よりズングリした形になってしまったが、まあよしとしよう。きっと本物の粘土とろくろを使っていたら、力加減が難しく繊細な作業で何度も失敗したはずだ。 第2段階は、ろくろを止めて取っ手を付ける工程だ。表面から粘土を引き延ばすように1つ目を作ったら、反対側にも同じ形の取っ手をコピーするだけなので、あっという間にできた。 第3段階は、絵付けだ。再びろくろが回るので、まず下地の黒色で全体を塗ることにした。茶色で塗る取っ手まで黒くなってしまったが、これは後で修正すればいい。 次に模様を描いていく。水平のラインはろくろを回したまま簡単に描けた。問題は中央部分の絵だ。ろくろは止められないので、じっくり描くことはできない。ブラシを近づけたり遠ざけたりして、それらしい模様を入れるしかない。ここは妥協しよう。 最後は、いよいよ窯に入れて焼く。火を入れて真っ赤に変わる様子が美しい。実際の陶芸の場合、焼くことで色が変わったりするが、そこまでは再現していないらしい。 つぼが焼き上がったら、いよいよ採点だ。形と色、取っ手の出来具合で評価される。今回は100点満点のうち74点だった。オリジナル作品と並べたら見劣りするが、見本から懸け離れていないので、初めてにしては上出来、上出来。