35万7500円の“プレミアム”なスクーターとは?
フルモデルチェンジしたホンダのスクーター「PCX」はどんな使いでがあるか、田中誠司が試乗した。 【写真を見る】新型ホンダPCXの詳細(16枚) 充実の装備内容をチェック
モデルチェンジの内容
二輪車の売れ線モデルはモデルチェンジの周期が短い。2010年3月に初代モデルが登場したホンダ「PCX」は2020年12月8日に4代目への移行が発表され、2021年1月28日に日本市場で発売される。前回のモデルチェンジからまだ2年しか経っていないが、フレームの形状やエンジンの基本設計まで刷新したそうだから完全なフルモデルチェンジというべきだろう。 PCXシリーズは“プレミアム・スクーター”の位置付けで、124ccの原付二種である「PCX」(12.5ps/35万7500円)と156ccで軽二輪となる「PCX160」(15.8ps/40万7000円)、モーターと124ccエンジンを組み合わせたハイブリッド・モデルで原付2種の「PCX e:HEV」(12.5+1.9ps/44万8800円)という3つのモデル構成となる。それぞれ、単気筒SOHCエンジンがこれまでの2バルブから4バルブとなり出力と燃料効率が向上、トラクションコントロール・システム“Hondaセレクタブル・トルク・コントロール”も標準装備となった。 フレームの刷新は156ccエンジン搭載にともなう出力アップに対応することと、シート下のラゲッジスペースを拡大(28→30L)することが主な目的だが、軽量化とハンドリング性能向上にも寄与するという。あわせて、全車でフロントのみABSを標準装着、リアブレーキもドラム式からディスク式に改められた。
都市部に最適な原付2種
横浜で実施された試乗会では124ccエンジンの「PCX」を試すことができた。筆者はふだんからBMWの「R1100RT」という、古くて重たいツーリングバイクを走らせているが、エンジン排気量51~125ccの原付2種というのは、自転車以上バイク・乗用車未満でとても具合がよく、かねてから興味を持っているカテゴリーではあった。 原付2種は50cc以下の原付1種と違って小型自動二輪免許が必要となるものの、最高速度は60km/hに上がり、いわゆる二段階右折も課せられず、ふたり乗りもOK。 しかし保険や税金の負担はほぼ原付1種とおなじで、もちろん車検もない。高速道路に乗れないという制約を除けばかなり自由でお得な乗り物だ。普段、乗用車と大型バイクと自転車で都市生活を送る者として、このPCXはどんな乗り物なのかを自分なりに観察してみた。 筆者がオートバイに興味を持ち始めたのは1990年代初頭、レーサーレプリカの全盛期で、その当時は世界グランプリ・レースの覇権をヤマハから奪ったホンダが、市販バイクの世界でも一歩抜け出ようとしている時期だった。ちょうどその頃、アメリカではホンダの乗用車がヒットし、ヨーロッパが中心のF1でもエンジン・サプライヤーとして常にトップを争う存在となっていた。 暇さえあればバイク屋を冷やかすオタクだった高校生の当時から、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキからなる二輪車4強のプロダクトを比べると、ホンダは突出してまとまりがよい、と、感じていた。ホンダは他社より早くから世界で活躍しており、業界の盟主を自認していたこともあるが、いま思えば4輪乗用車を多数送り出す過程でより高い品質を身に着け、それと並行して大企業化が進んでもいたのだろう。勝手にホンダに対する反感を覚えていたぼくは、スズキやカワサキを選んで乗っていたものだ。