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明大時代の「江川キラー」看板に偽りなし 伝説のナゴヤ球場大逆転劇を呼んだ男 経営する店は「おちょうしもん」でも実は…

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中日スポーツ

渋谷真コラム・龍の背に乗って[強竜列伝・豊田誠佑]

 江川キラーと呼ばれた男は、現在、名鉄山王駅前で居酒屋を営んでいる。屋号は「おちょうしもん」。豊田誠佑(1956~)の声は活力に満ちていた。  「ようやくだね。18日からお店を開けました。およそ50日間だったよ。うん。長かった。でも、戦いはこれからも続くからね」。営業を自粛したのは緊急事態宣言が発出される前の3月下旬。「どうもヤバいぞって思ってね」。閉める勇気。ただの「おちょうしもん」ではない。  「大学時代に江川(卓)さんを打っていた。それでプロに入れたと思っているから。プロでも打たなきゃいけない。それはいつも考えていた」  法大の江川を明大の豊田が打つ。「3年の明法戦では8打数7安打」だったと胸を張る。ドラフト外での入団。「怪物」に強かったというのは、勧誘を後押ししたのかもしれない。

 通算251安打、13本塁打、84打点。レギュラーに手がかかったことはあるが、つかみきれなかった。記録より記憶。巨人の江川を中日の豊田が打つ。痛快と熱狂。語り草なのは1982年9月28日の巨人戦(ナゴヤ球場)。リーグ優勝への重要な分岐点と言われる大逆転劇だ。江川相手に4点差で迎えた9回。絶望的な壁に、最初の穴をあけたのが代打・豊田の左前打だった。小さな穴は大きく広がり、一挙4点。延長10回にサヨナラで沈め、3・5ゲーム差に開くところが1・5差に詰め寄った。  「あれで勢いがついたのかなあ…。あの年から永田や仏壇店がスポンサーになって、代打安打賞ができたんだよ。点差もあったし、打てたらラッキーくらいの気持ちだったのが良かったのかな」  実はこの打席まで、対江川は11打数1安打。豊田がこの一打で得たのは賞金1万円だけではない。落ちかけていた江川キラーの看板を、生涯飾ることが許された。  「ナゴヤ球場(2軍戦)の帰りに寄ってくださる人もいるしね。早く開幕してほしいよ」  この試合を語りたくて、のれんをくぐる野球好きがいる。お店の自慢は旬の魚とくじらのユッケ。陽気な「おちょうしもん」から、ナイショ話が聞けるかも。

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