年収の壁見直し〝住民税分離案〟なら少ない恩恵 国民民主想定より減税額が3~7割も減少
国民民主党が掲げる「年収の壁」の見直しを巡り、与党内で、国税である所得税の基礎控除を引き上げる一方、地方税である住民税の基礎控除は据え置く〝住民税分離案〟が浮上している。国民民主はもともと年収にかかる両税の基礎控除の引き上げで大幅な減税効果を訴えていたが、住民税の減収を懸念する地方自治体の反発が強まったことで分離案が考案された。税理士の試算では、この案が実施された場合、国民民主の想定に比べ3~7割も減税額が減少する見通しだ。減税効果が大きく見劣りしてしまうだけに、同党は分離案に反対姿勢を示す。 【表でみる】控除額を178万円に引き上げた場合の年収別減税額 ■所得税より重い住民税負担 年収(給与所得)にかかる所得税と住民税には、それぞれ納税額を求める際、年収額に関わらず一律の金額を差し引く基礎控除が設けられている。最低限の生活費に課税しない目的で設定され、その控除額は所得税が48万円、住民税が43万円。この水準が約30年間変更されていないことから、国民民主はこの間の最低賃金の上昇率に基づき両税の基礎控除を75万円引き上げる(所得税123万円、住民税118万円)ことで、個人の税負担軽減を図ると訴えている。 両税の納税額は、基本的には年収から社会保険料と各種控除や基礎控除を差し引いた金額に、各税の税率をかけて算出する。ただ、控除額や税優遇は所得税の方が大きい。また、税率が一律10%かかる住民税は、年収が低い世帯ほど税負担が重くなりやすい。住民税分離案で減税効果が大きく縮小するのは、このためだ。 ■分離案実施で国民支持層から批判も 国民民主の試算では、年収200万円(現在の所得・住民両税の合計負担9・1万円)の場合、同党の案である所得と住民両税の基礎控除を75万円ずつ引き上げれば、税負担額は0・5万円となり、その減税額は8・6万円になると想定している。 一方、辻󠄀・本郷税 理士法人の山下大輔公認会計士・税理士の独自試算では、同年収世帯で住民税の基礎控除を据え置く分離案を実施した場合、税負担は6・1万円となる。減税額は2・7万円にとどまり、国民民主案に比べて約7割も減税効果が小さくなる。山下氏は、「分離案が実施されれば、国民民主の支持層からは『話が違う』といった批判の声も出かねない」と指摘する。 ■国民案で地方税収5兆円減少