パンデミックの背後で拡がる薬物問題 孤立とストレスが影響か
新型コロナウイルスの大流行に見舞われるアメリカで、違法な薬物使用、致命的な過剰摂取が急増する見込みだと、公衆衛生の専門家らが報告した。薬物検査や保健部門のデータから、新たな警鐘を鳴らしている。 過去10年間で薬物の過剰摂取により、全米で約50万人もの人が死亡している。その多くは合成オピオイド(麻薬性鎮痛薬)「フェンタニル」の乱用だ。2016年に死亡したミュージシャンのプリンスの死因も、フェンタニルの過剰摂取だったことが明らかになっている。 新型コロナウイルスの大流行は、ヘロイン、コカイン、メタンフェタミン(覚せい剤)関連の物質使用障害(薬物依存、薬物中毒)を抱える全米の多くの人にとって、この差し迫った危機を悪化させているようだ。 「過剰摂取の危機に対して私たちがとった応急処置が、この大流行によって剥ぎ取られているんです」とRTIインターナショナルで違法な薬物使用を研究している上席研究員のジョン・ジーベル氏は話す。 「新型コロナの感染防止に必要なすべて、物理的な距離を取ること、店を閉めること、会合を制限することが、過剰摂取の危機を悪化させています」 「私たちは実際には、2つの大流行に見舞われています」とジーベル氏は付けくわえる。新型コロナ罹患の波に、過剰摂取が隠れているのだ。 2年前、致命的な過剰摂取の数はわずかに減少した。トランプ政権が全国的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した過剰摂取の危機に、微かな希望の兆しが見えた。 だが、米国疾病予防管理センター(CDC)による暫定値によると、昨年ふたたび増え始め、2019年には約7万1000人が死亡した模様だ。 連邦政府が支援している過剰摂取検知マッピング・アプリ・プログラム(Overdose Detection Mapping Application Program)が、5月に警告した。同プログラムの速報では、6州における2020年の過剰摂取率は平均で20%増加していることが明らかになっている。