東京パラ聖火、8月20日に全62区市町村で「採火」
東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会が31日、パラリンピックの聖火リレーなどの概要を公表した。東京都内では8月20日、全62区市町村で「採火」が行われ、各自治体は「平和」や「火」「障害者」などをテーマに地元ゆかりの場所で火をともす。一つに集められた聖火が都内をリレーした後、大会は24日に国立競技場(新宿区)で開会する。 【動画】56歳記者が超難関オリンピックコースを走ってみた
「平和」を世界に発信
「平和を象徴する火の存在を世界に発信したい」とするのは板橋区。区は核廃絶の祈りを込めて区役所に置いたガス灯「平和の灯(ひ)」から採火する計画だ。 被爆地となった広島市平和記念公園の「平和の灯(ともしび)」と長崎市平和公園の「誓いの火」から分けてもらった火をともすため、1992年に設置した。火を絶やしたことは一度もなく、灯の下には、被爆後に長崎市から寄贈された瓦などの資料も展示している。区内の中学生らは例年、両市を訪ねて平和学習を続けており、採火も地元の中学生が担う予定という。
童謡「たきび」ゆかりの公園から
童謡「たきび」を作詞したことで知られる詩人の巽聖歌(1905~73年)が後半生を過ごした日野市では、歌碑が設置されている旭が丘中央公園で採火する。 近隣の市立3小中学校の児童・生徒が童謡にあやかり、たき火から火を採るという。ランタンに移された火は市内の福祉施設や特別支援学校を巡回する。市の担当者は「地元に愛されている巽聖歌にゆかりのある場所で採火し、みんなで大会を盛り上げたい」と話す。
「マイギリ式」や町工場発の凹面鏡で
地域で発掘された古代の文化財などを所蔵する「飛鳥山博物館」がある北区は、子どもたちが伝統的な火おこしの方法「マイギリ式」の器具を使い、飛鳥山公園内で採火することを想定している。「ものづくりの街」としての歴史を持つ大田区は、町工場で製造した凹面鏡で太陽光を集め、事前に種火を採る予定だ。 特別支援学校や障害者福祉施設も舞台となる。杉並区は、区立済美養護学校など3か所で「希望」「スポーツ」「文化」の火をおこし、一つにまとめる。白石高士・区教育長(57)は「子どもたちには、歴史的瞬間に立ち会える喜びを感じてほしい」と期待する。 64年に前回東京パラリンピックが開かれた渋谷区では、障害者福祉施設「はぁとぴあ原宿」で採火する。施設長の平井真琴さん(62)は「一生に何度もないイベント。密にならないよう気をつけながら、多くの人に見てほしい」と話している。