竹内薫/量子コンピュータの世界第一人者・古澤明の“凄さ”〈2021年 日本を動かす21人〉――文藝春秋特選記事【全文公開】
「文藝春秋」1月号(2020年12月10日発売)の特選記事「古澤明――量子コンピュータの世界第一人者」を公開します。 ◆ ◆ ◆ 第4次産業革命のキーワードとしていつもあがるのが、人工知能、モノのインターネット、5G(6G、7G)、そして量子コンピュータである。このうち前の3つは、さまざまなところで解説されているし、なんとなく概要がわかっている人が多いだろう。だが、最後の量子コンピュータはどうか。コンピュータはいいとして、量子ってなんだろう。原子とは違うのか、素粒子のことなのか、ほとんどの人が、チンプンカンプンなのではあるまいか。 2021年に活躍するサイエンティストとして、私は、量子コンピュータ開発の第一人者、東京大学の古澤明教授(59)の名を挙げたい。10年ほど前、「諸君!」という雑誌の連載で取材に伺ったことがあるのだが、その時の第一印象は「ああ、この人は将来、ノーベル賞を取る人だな」というものだった。無論、ノーベル賞を実際にもらうかどうかはどうでもよく、とにかく、サイエンティストの最高峰に位置する人だなと直観したのである。 1961年生まれ、私とほぼ同世代である。東京大学を卒業後、日本光学工業(ニコン)に入社して研究生活に入ったが、若い頃から上司とは丁々発止のやりとりをしていたそうだ。上からの命令に諾々と従うのではなく、自らの信ずる道を進むあたりが、一流かそうでないかの違いなのかもしれない。
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竹内 薫/文藝春秋 2021年1月号