「相手も使っているから」「スマート地雷だから」…こうして対人地雷の被害を受けるのは大半が無関係の民間人だ
地雷原となるウクライナ
米国が、対人地雷をウクライナに供与することを承認し、物議を醸している。 しかし、この戦争における対人地雷の使用は今回の米国による供与に始まったことではなく、すでに戦闘地域一帯が巨大な地雷原になってしまっている可能性がある。 【画像】重大な後遺症を残す対人地雷は、被害者の人生を破壊する 米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、ロシア軍は2014年のクリミア侵攻時からウクライナで対人地雷を使用しており、2022年のウクライナへの全面侵攻においても、対人地雷の配備を続けている。いまでは、ウクライナの27の行政区のうち11地域で地雷が見つかっている。 他方でウクライナ軍も、東部のロシア支配地域に向けて、対人地雷を搭載したロケット砲を発射している。 今回、米国が決定した対人地雷供与は、ウクライナの地雷原化をさらに加速させるだろう。 米紙「ワシントン・ポスト」などによると、供与される対人地雷は非持続型と呼ばれるもので、4時間から2週間後に内蔵バッテリーが切れて無力化するように設定されているという。これが正常に動作すれば被害は限定的になるが、正常に動作するのは7割以下という報告もある。
広がる永続的な被害
対人地雷は戦時中だけでなく、戦争が終わった後にも悲劇をもたらす“悪魔の兵器”と呼ばれる。 軍や戦闘集団は対人地雷を使用する際、敷設した場所を記録することはほとんどない。最近では、ドローンやロケット砲から無差別に「散布」するケースも多い。そのため、地雷がどこに埋まっているか、敷設した当人たちにも正確にはわからず、ましてや民間人にはまったくわかるはずもない。 英紙「インディペンデント」によると、世界の地雷による被害者の84%を民間人が占め、そのうち3分の1以上を子供が占めているという。そして、民間人の被害は、統計に表れている数よりも実際はもっと多い可能性が高い。 ウクライナ以外の戦闘地域でも、現在進行形での地雷の使用による被害の拡大は進んでいる。 2024年11月に発表された地雷禁止国際キャンペーンによる報告書「ランドマイン・モニター2024」によると、2023にはミャンマーがこれまで一位だったシリアを抜いて、地雷による死傷者数が最大の国となった。ミャンマーでは2021年の軍事クーデター以降、軍事政権と武装抵抗グループの双方が大量に地雷を使用している。 地雷は命を奪うだけではない。重い障害を残し、もともと貧しかった生活をさらに困難にする場合がある。ランドマイン・モニターのプロジェクトマネージャーはインディペンデントに対して、「あまりにも多くの被害者が適切な医療、リハビリ、その他の支援を受けることができていない」と懸念を示している。 対人地雷の使用、開発、生産、貯蔵、保有、移譲などを禁止する「対人地雷禁止条約」には、164ヵ国が加盟している。 しかし、米国、ロシア、中国などの軍事大国や、イスラエル、シリア、インド、パキスタン、韓国、北朝鮮などは加盟していない。また、加盟国であるウクライナがロシアの侵攻開始以降は対人地雷を使用していたり、条約に縛られない非国家勢力が大量に使用していたりするなど、実質的に機能していない側面もあり、課題は依然として大きい。
COURRiER Japon