【更年期の子宮と卵巣の病気】子宮内膜症と子宮腺筋症の違いって?
本来は子宮内のいちばん内側にしか存在しないはずの子宮内膜が、別の場所にできてしまうのが子宮内膜症と子宮腺筋症だ。本当の内膜がはがれるのとリンクして、ほかにできた場所からも出血する。「女性の一生を通じてQOLを著しく損なう」として注視される病気で、近年は広い年代で増えている。 前回は子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫の違いについて確認した。今回はより詳しく、子宮内膜症と子宮腺筋症について、産婦人科医の対馬ルリ子さん、八田真理子さんに聞いた。
以前は同じ病気として扱われていた!
●子宮内膜症と子宮腺筋症 内膜症と腺筋症は長らく同じ病気として扱われていたが、子宮外にできる内膜症とは異なる点が多いため、区別して腺筋症と呼ばれるようになった。
●子宮内膜症のできやすい場所 内膜症は子宮内膜以外の場所、どこにでもできる。血管やリンパ管に乗って離れた場所にも発生。例えば、肺にできて月経のたびに血を吐くことから病気が発覚するケースも!
次々に新事実が発覚するミステリアスで深刻な病気
「内膜症も腺筋症も、年代やその人の状況によって気をつけるポイントが変わります。若いうちは不妊と月経トラブル、妊娠中は早産など。そして更年期にはがん化、さらに動脈硬化からの心筋梗塞や脳梗塞です。内膜症で動脈硬化?と思うかもしれませんが、新たにわかってきたんです」(八田先生) がん化が心配なのはチョコレート嚢胞。卵巣にできた子宮内膜症のことで、50代で卵巣がんのリスクがはね上がることが知られている。また、国内外の報告では、卵巣がん以外のがんにかかる人が多いこと、閉経前後には心脈管系の病気にかかる人が多いこと、骨粗しょう症のリスクが高いことなどが明らかに。 もはや「閉経したら治る」ではすまされない病気なのだ。 子宮内膜症で受診した人は、わずか10年で2倍に。40代が急増している。これは受診数のため、受診せずにいる人はこの何倍にも及ぶと推測できる。 次回は、知っておきたい子宮内膜症リテラシーを紹介する。 話を聞いたのは 対馬ルリ子さん 1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評 八田真理子さん 産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)など。 イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子