離島から甲子園に新風 09年Vの清峰と重なる大崎 選抜高校野球
人口5000人弱の島から、甲子園に新風を吹き込む。兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開催されている第93回選抜高校野球大会は第3日の22日、1回戦第2試合で大崎(長崎)と福岡大大濠との「九州対決」が実現した。大崎は長崎県西部の西海市の離島・大島にある小さな県立校だが、初めて九州大会を制して春夏通じて初の甲子園にたどり着いた。長崎の県立校といえば、2009年のセンバツを制した清峰が思い浮かぶ。清峰に続く、新たな県立校旋風を巻き起こせるか。 炭鉱業で栄えた大島は高齢化と過疎化が進み、1958年のピーク時には2万人近かった人口も約4分の1ほどになった。大崎も全校生徒113人の小規模校だ。17年には部員5人で廃部寸前だった野球部だが、18年4月に清水央彦(あきひこ)監督(50)が就任したことで新たな転機を迎えた。清水監督の指導手腕に期待する20人が入部し、厳しい基礎練習でめきめきと力をつけ、19年秋に58年ぶりに九州大会に出場した。 野球部の活躍は島民を沸かせ、応援も広がった。学校や寮、グラウンドを自転車で行き来する野球部員は毎日のように「頑張ってね」と声をかけられるようになり、頻繁に魚や野菜を差し入れられるようになった。期待に応えるように成長を続け、昨秋の九州大会では、観戦を認められた保護者や野球部の後援会が「小さな島のでっかい夢 甲子園」と記した横断幕を掲げて応援。初の九州大会制覇を後押しした。 清水監督の「指導手腕」は、清峰でコーチや部長を務め、監督として佐世保実(同)を夏の甲子園に導いた過去の実績が証明済みだ。とりわけ05~06年にコーチを務めた清峰での経験が生きている。 清峰は05年夏に初めて甲子園に出場すると、強豪を次々破り「ミラクル清峰」と呼ばれた。翌06年はセンバツ初出場で準優勝。09年にはセンバツを制し、春夏通じて長崎県勢初の甲子園制覇を果たした。08年秋に同校を離れた清水監督だが、当時は投手の育成に定評があった。09年センバツ優勝の立役者、エース右腕の今村猛(現広島)も清水監督の指導を受けた一人だ。今村の代名詞でもあった力感のないフォームからの伸びのある直球やテンポの良さは、清水監督の助言のたまものだ。その特徴は、昨秋の九州大会で1回戦から準決勝まで3試合連続完投勝ちした大崎のエース右腕・坂本安司(3年)に引き継がれている。 「目標は甲子園に出場することではなく、勝つこと」と話す清水監督。昨秋の長崎大会決勝から九州大会決勝まで、すべて逆転勝ちした粘り強さを初の甲子園でも発揮する。【吉見裕都】 ◇全31試合を動画中継 公式サイト「センバツLIVE!」では、大会期間中、全31試合を中継します(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2021)。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/senbatsu/)でも展開します。