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【論説】道化演じるジョンソン新首相、EU離脱にどう立ち向かう

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The Guardian

【ガーディアン論説委員】  英国の保守党はとうとう、おあつらえ向きのリーダーを手に入れた。新首相、ボリス・ジョンソン氏はうんざりするような事実から逃れたり、酷評から身を隠したりすることはできないのだから。1940年のウィンストン・チャーチル氏以降就任した首相の中で、ジョンソン氏は最もやっかいな課題に直面している。どう欧州連合(EU)を離脱するかだ。  このような混乱に陥ったのはジョンソン氏の責任によるところが大きいのだから、仕方ない。だが、成功は期待できない。ジョンソン氏は「合意の有無にかかわらず」今年10月31日にEUを離脱するとの公約を掲げてきたが、それは政治的方便であると同時に破壊的約束でもある。  その虚勢は首相の座を射止めるのには役立っただろう。だが、EUの気勢をそぐことはできず、むしろ党内の反対派をかたくなにしただけだった。合意なき離脱は英国経済を台無しにし、国を分裂させ、アイルランド島での暴力を呼び戻す恐れがある。ジョンソン氏がEUからの完全な離脱を意味する「ハード・ブレグジット」を避けられると言うのも無理はない。どうやって避けるかは明言できないが。もし事態が悪化しても自分に害は及ばないと思っているのだろう。だが、ジョンソン氏の周りを固めるのは保守党の強硬な右派で、命令に従うより命令するのが好きな人たちだ。ジョンソン氏もいずれそれに気づくだろう。  ジョンソン氏の勝利は、保守党が20年にわたり愚行を積み重ねてきた結果だ。それは20年前、保守党が大衆を巻き込みEUに嫌悪的な姿勢を取り始めた時から始まった。保守党は権力を握るためには移民を政治問題にし、ジョンソン氏が喜んで持ち出したようなEUに懐疑的なプロパガンダで票を獲得する必要があると考えた。ウィリアム・ヘイグ英外相(当時)が2001年、英国が「外国」になるリスクがあると警告し、「市民」を「リベラルのエリート」と戦わせたばかばかしさを思い出してほしい。その1年後、マーガレット・サッチャー元首相が、いつだって英語圏の国々が大陸を助けなければならない、英国はEUを離脱すべきだと述べ、「ナチズムは欧州のイデオロギーだった、第三帝国は欧州支配の試みだった」と主張した。ジョンソン氏も2016年のEU離脱の是非を問う国民投票の際、似たようなばかげた主張を繰り広げていた。  中道右派の政治家がポピュリスト的な国家主義をうたい、政策に掲げる場合、勝利を得るのは強硬派だけだとジョンソン氏は知るべきだ。悪魔と取引できると考えているのであれば、客としてテーブルに着いていたつもりが、最後にはデザートとして食卓に上っていることに気づくことになるだろう。  ドナルド・トランプ米大統領との関係は、そうなることが最も明らかだ。トランプ氏との友好関係は高くつくだろう。ジョンソン氏の意図に反し、ハード・ブレグジットは避けられないだろう。そうでないと、トランプ氏が望む英米の貿易関係を実現できない。ハード・ブレグジット支持派をかき集めることは、支持者より不支持者を増やすことになりかねない。これはジョンソン氏に関する世論調査でも裏付けられているようだ。  ポピュリズムのうねりは市民の敵と位置づけた人たちを標的にするために、合法的に形成された政府を転覆させようとしている。だからこそ、保守党内外で立ち向かわなければならない。ジョンソン氏は道化を演じている。だが、サーカスは続き、後に残されるのはぼろぼろになった国だけだ。【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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