イスラエル軍、シリアとの間に位置するヘルモン山での冬季駐留準備へ
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は13日、同国軍に対し、隣国シリアとレバノン、イスラエル占領下のゴラン高原にある国連監視の非武装緩衝地帯の境界に位置する、ヘルモン山の山頂で冬季駐留する準備をするよう指示した。 イスラエルは、隣国シリアの反政府勢力の進攻によってバッシャール・アル・アサド政権が倒れた8日、同緩衝地帯をイスラエル軍が一時的に管理下に置いたと発表していた。 イスラエル国防省は声明で、「シリアで起きていることを考慮すると、我々が(ヘルモン山の)山頂に留まることが、安全保障のため非常に重要だ」と述べた。 カッツ氏は、双眼鏡を使うベンヤミン・ネタニヤフ首相の画像をソーシャルメディアに投稿し、「51年ぶりにイスラエルの支配下に戻った、シリアのヘルモン山の山頂を見下ろしている」と書いた。 国連はイスラエルに対し、シリアとイスラエル占領下のゴラン高原との間に位置する緩衝地帯から撤退するよう求めている。 アントニオ・グテーレス国連事務総長は声明で、「シリアの主権と領土保全に対する、このところの広範な侵害行為を深く懸念している」と述べた。 国連はイスラエルが、1974年にシリアと合意した兵力引き離し協定に違反しているとしている。この協定により、ゴラン高原の緩衝地帯が設定された。 イスラエル側は、シリアで反政府勢力が実権を握ったことで、この協定は「崩壊」したと主張している。 ヘルモン山の山頂は、シリアとレバノンの国境に位置する。山頂近くの国連基地は、緩衝地帯の中にある。 ゴラン高原は、シリアの首都ダマスカスの南西約約60キロメートルに位置する岩だらけの高原。イスラエルは1967年の6日間戦争の終盤にシリアから奪い、1981年に一方的に併合した。国際的には承認されていないが、2019年にトランプ米政権が単独で認めた。 シリアのアサド政権が倒れた後、イスラエル国防軍(IDF)は緩衝地帯を掌握し、ヘルモン山の山頂を含むゴラン高原に陣地を移した。 カッツ氏の事務所は、「厳しい気象条件の中で兵士が現地にとどまれるよう、IDFの現場での即応態勢を確保するためにあらゆる手を尽くさなければならない」と声明で述べた。 グテーレス国連事務総長は12日、1974年の協定は「今なお有効」で、それに違反するあらゆる行為を非難するとした。そして、この協定の当事国に対し、「兵力引き離し地域(AOS)における、無許可の駐留をすべて停止する」ことを含む、双方の義務を守るよう求めた。 また、シリア国内の複数の場所に対し、イスラエルが数百もの空爆を実施していることを「特に懸念している」と述べた。 IDFによると、空軍と海軍は今週、シリアの軍事施設を標的とした空爆を350回以上実施した。 イスラエルは、武器が「過激派の手に渡る」のを阻止するために行動していると主張している。 (英語記事 Israeli army prepares to stay on border peak of Mt Hermon for winter)
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