護摩行に滝修行。プロ野球の珍自主トレに効果ある?
今オフには、珍トレというものはなかったが、過去には他アスリートとの異色タッグなども少なくなかった。特に格闘家とのコラボが多く、阪神時代の下柳剛とIQレスラー、桜庭和志、横浜DeNAの三浦大輔とプロレスラーの蝶野正洋が組んだりした。ソフトバンクの内川聖一は、陸上の女子短距離の五輪選手である福島千里と合同自主トレを行ったし、他にも、競輪教室への入門、相撲部屋への入門、なかには歌舞伎見学などという珍しいものまであった。阪神の2軍監督の掛布雅之氏も、現役時代には、スキートレーニングや、バドミントン、テニス、卓球などの他競技に専門家を招いて本格的に挑戦するような自主トレを取り入れてきた一人。 「普段使わない筋肉を使うことと、視野を広げるのが目的だった。スキーでは体幹。バドミントンでは、初速200キロを超えるシャトルを目で追う動体視力。キャンプに入ると野球しかしないわけだから、楽しみながら、アスリートとしての幅も広げたかった。効果はあったし、どんどん若い選手は考えて取り組んでみればいい。12月、1月をどう過ごすかが重要なのだから」 他球団の選手との合体など、異色スタイルの自主トレが始まったのは1988年のオフからだ。プロ野球選手会が、給料をもらわない12、1月に、合同自主トレの名目で、実質のキャンプの前倒しをするのはおかしいと強く訴え、ポストシーズンが厳守されることになった。 当初は、多くの選手が戸惑って、温泉保養や温暖な海外でのゴルフがメインの名ばかりの自主トレも少なくなかった。筆者もスポーツ紙記者時代には、温泉地の自主トレ取材にお邪魔してドンちゃん騒ぎをしたものである。後援者の紹介や興味半分で一日だけのボクシング体験というような軽いノリでのマスコミサービスを主体とした自主トレ公開なども存在していた。 だが、一方で中日時代の落合博満が伊豆で行った自主トレに、巨人の長嶋一茂が参加して、真剣に打撃アドバイスを請うなど、その機会をプラスに変えようとする価値あるコラボもあった。守備の名手、ヤクルトの宮本慎也の自主トレに参加した巨人の坂本勇人もそうだろう。今では、“やらせ自主トレ”は、ほとんど消滅、巨人・阿部慎之助のグアムでの自主トレが、毎年、後輩たちに受け継がれていくなど、それぞれのスタイルが確立しつつある。ちなみに自主トレ費用は、全額選手の自己負担。阿部が、坂本、長野らを引き連れて行ってきた、そのグアムでの自主トレには、栄養士からトレーナーまでを帯同させている。 いずれにしろ自主トレの成果とは、シーズンで勝てたか、打てたか、の結果でしかない。 それぞれの思いを乗せてキャンプがスタートする。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)