「紫金山・アトラス彗星」を撮りたい! 2回も飛行機を飛ばしたのに… 1年ごしの撮影計画の結果は
発見できないままゲームセット、しかし
そうこうしているうちに、夜明けはますます進み、もう、見えている天体は月だけになりました。ゲームセットです。 私は機長に「ありがとうございました。帰投しましょう」と伝えました。 「こんなに見えにくいもんですか」「かなり難しいなあ」「思ったより雲がありましたねえ」「記事をどうするか、検討し直します……」。機内はまるでお通夜です。 1回目は故障とは言え、2回も飛行機を飛ばして成果ゼロとは、仙石秀久が大敗した「戸次川の戦い」に並ぶ大失態と言えます。 だからといって減給になることはありませんが、これから空撮の提案が通りにくくなっちゃうかも……と絶望しました。 着陸後、私とエバラさんは撮影データをコピーして、それぞれがパソコンのモニターで確認することにしました。 私はいったん帰宅してパソコンにデータを移し、ディスプレーに写真を表示させました。チェックしていくと、1千枚ほど撮影したデータの20枚目くらいに、夜明けの空に尾をなびかせる彗星の姿が写っていました。 写っていたのは最初の方だけで、後半はもう夜明けが明るすぎて写っていませんでした。やはり、最も早いタイミングで見られたかどうかだったわけです。 ほっと胸をなで下ろして、「写ってました!」と全員にメールを流すと、エバラさんから電話がかかってきました。 「動画にも映ってる!! 撮れてる。よかった、よかったぁ~」。フォトグラファーにとって、撮れているかいないかのプレッシャーは記者の比ではないんですね。 彗星の写真は、その日の夕刊社会面を大きく飾りました。あ~、よかった。2人とも胸をなでおろしました。 現在は、SNSなどでスマホでの撮影投稿も相次いでいる紫金山・アトラス彗星。今月いっぱい、日没後の西の空で観察できます。 【YouTubeチャンネル「朝日新聞宇宙部」はこちら】https://www.youtube.com/watch?v=rETzjF1SrYU ◇ 「朝日新聞宇宙部」の登録者数10万人達成を記念して、「しつもん!ドラえもん」クリアファイルをプレゼントします。ご応募はこちら(https://que.digital.asahi.com/question/11014943)から。