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トンプソン ルークに直撃──リーチ マイケルを支えた38歳の仕事人

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GQ JAPAN

ラグビー好きたちがW杯2015大会で、ジャパンのMVPに推していたのがトンプソン ルークである。ボール獲得の最前線で常に体をぶつける38歳の仕事人は、W杯4大会連続出場と初のベスト8進出を果たした。たたかいを終えたいま、日本代表への思い、そして今後の人生を語る。 【この記事を読む!】

トンプソン ルークは日本代表の16人目の外国人選手であると同時に、15人目の日本人選手でもある。そして、自他ともに認める4人目の大阪人─。 彼には、そんなジョークが違和感なくあてはまる。”おじいちゃん”と自称し、チームメイトから”トモさん”と呼ばれる彼は気さくかつ闊達、ユーモラスに語ってくれた。 「南アフリカに負けたの、悔しかった。けど、日本代表は歴史をつくったね。これはメッチャ凄い。W杯は日本代表にとって最高のチャンス、貴重なエクスペリエンス。僕個人でいえば、メチャ本当にグレートフル!」 心残りは母国のオールブラックスと対戦できなかったこと。 「もし試合になったら遠慮しない。ブチかましにいった。やりたかったね」 このW杯でトンプソンをとりまく状況も激変した。街へ出ればファンが囲み、サインをねだられ写メの標的となる。 「僕なんか、大会前は”背の高い外国人選手”でしかなかったのにね。外国人選手で知られてたのはリーチくらい。でも今は違う。新幹線に乗るときは、僕もスターみたいだよ」 トンプソンはチーム最年長のうえ、W杯に4回出場(日本代表最多タイ記録)と申し分ない実績を誇る。さらに16年にわたる日本での生活を経験し、帰化も果たしている。日本代表チームにおいて、彼は影のキャプテンとして、また日本人と外国人の間をとりもつ重責を担うひとりとして、存在感を発揮した。 「どの外国人選手も生まれた国は大事。家族だって大事。外国人選手に24時間日本人でいろ、といってもそれは無理。でも、みんな日本が大好き。だから日本代表のためにプレーする。これが、とても大事。そのことをアピールしたね」 対戦相手が母国であっても容赦はしない。日本代表として死力を尽くす。母国を想うのはノーサイドになってから。 「これが僕らのプライド。それに、僕らは日本の友だちや会社から、最高のリレーションシップをもらっている。その恩返しをしなくちゃ」 リーチの主導で日本文化や歴史のレクチャーを重ね、宮崎県でさざれ石を見学したのも効果大だった。ラグビーをするために来た異国がより身近になった。 「外国人選手だけじゃない。日本人選手も日本のこと、あまり知らないからね」 トンプソンのパーソナリティは、こんな場面でも発揮された。 「日本人の若手はゲームとスマホ中毒。でも、僕はいったの。食事の時はスマホをみるなって。それより仲間としゃべれって。同じ釜の飯というんだっけ? これ、チームスポーツの絆には大事。ゲームやSNSしてる場合じゃない」 福岡堅樹から「トモさんとはジェネレーションギャップを感じる」とやり返されたそうだが、チームメイトたちは笑顔でトンプソンの言い分に従った─。 「外国人と日本人、日本代表では大きな問題じゃなくなった。そりゃ個性の違い、性格の違いはある。けど、憎むような人はいない。いたら、あの長い合宿、家族より長く暮らしていけないよ。試合になれば、考えるのは勝つことだけ。日本代表はONE TEAMだった」 彼はラグビーの醍醐味をこう表現する。 「ゲームプランの中で個人のタレントをどう発揮するか。それをフォア・ザ・チームにつなげる。助け、助けられてのプレーがないと勝てない。日本代表はこれがとてもうまくいったね」 トンプソンはラグビーだけでなく、日本という国が、代表チームのように異国を受容し理解できると信じている。 「だってインバウンドやイミグレーションで外国人、日本にメチャ多くなった。肌の色や出身の国で区別してたら、これからやっていけないでしょ?」 トンプソンは日本代表から退く。ホームチームの近鉄ライナーズも今シーズンで勇退し、ラグビー人生に幕をおろす。 「一家でニュージーランドに戻る。あっちで鹿の牧場をやる。鹿は角が漢方薬の原料になるし、肉もおいしい。新しい人生とビジネス、成功させたいね」 こういってから、彼はしごくマジメな表情になった。 「僕だけじゃなく家族も日本といい関係になれた。3人の子どもは日本で生まれた。日本語も英語もしゃべる」 南アフリカ戦の後で、長男は「日本が負けた、悔しい」と号泣した。それをみて父は胸がいっぱいになった。 「僕の家族は日本大好き、大阪メッチャ好き。このことは大事にしたい。トンプソン一家は日本を忘れない」 日本と母国を愛しながら、決して己を失わないトンプソン。彼の人生の後半戦を告げる銅鑼が、いま打ち鳴らされる。 PROFILE トンプソン ルーク 1981年、ニュージーランド出身。13歳でラグビーをはじめる。2004年に三洋電機ワイルドナイツ(現パナソニック)に入部。2010年に日本国籍を取得。日本代表では4大会、W杯に出場。近鉄ライナーズ所属。

文・増田晶文 写真・マチェイ・クーチャ

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