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偽装表示では? わらび粉が入っていない「わらび餅」、法的問題はない?

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オトナンサー

 夏になると和菓子店やスーパーに並ぶ機会が増える「わらび餅」。涼しげな見た目で、きな粉や黒蜜とともに楽しむ人も多い和菓子です。わらび餅はその名の通り、ワラビから取れる「わらび粉」を使った菓子だと思いがちですが、実はスーパーなどで買える安価なわらび餅は、ほとんどわらび粉が入っていなかったり、まったくわらび粉が入っていなかったりするようです。  かつて、偽装表示が大きな社会問題になったことがありましたが、わらび餅に法的問題はないのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

多くはでんぷんが主材料

Q.市販のわらび餅で、ワラビから取ったわらび粉を使っていない、あるいは、ほとんどわらび粉を使っていない商品があるのは事実でしょうか。 牧野さん「わらび餅は、古くはワラビの粉(わらび粉)から作られていましたが、現在、わらび粉は希少でとても高価になったため、わらび粉を使ったわらび餅は極めて少数です。現実には、他の植物から取ったでんぷんが主材料でも『わらび餅』として売っていることが多いようです。中には、まったくワラビの粉が入っていないものもあると思われます」 Q.なぜ、わらび粉の量が少ない、あるいはまったく使っていないのに「わらび餅」と名乗れるのでしょうか。 牧野さん「食品の表示については、2015年に食品表示法が施行され、包括的、かつ一元的な制度が創設されました。具体的な表示のルールは食品表示基準(2015年内閣府令10号)に定められており、食品の製造者、加工者、輸入者、または販売者に対して、食品表示基準の順守が義務付けられています(同法5条)。 食品表示基準には、『わらび餅』等の加工食品の表示に当たって、加工デンプンを使っている場合は、添加物として加工デンプンを表示する必要がありますが、一方で、どういった製品が『わらび餅』と名乗れるかについては明記されていません。 つまり、わらび粉使用の有無と表示についての規制がないため、わらび粉を使っていなくても『わらび餅』と名乗っていると思われます」 Q.わらび粉を使っていない、あるいは少量使っていてもサツマイモなどのでんぷんが主原料の菓子を「わらび餅」として売ることに法的問題はないのでしょうか。 牧野さん「不正競争防止法が禁じる『品質、内容の虚偽表示』に該当する可能性があります。 同法では、商品などの品質や内容について誤認させるような表示をしたり、そのような表示をした商品を売ったりする行為を『不正競争』の一つとして取り締まりの対象としており、違反した場合、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、またはその併科に処される可能性があります。 ただ、現実的には、そのわらび餅を消費者が『わらび粉を使っていない商品』、あるいは『わらび粉をほとんど使っていない商品』と認識できるような表示かどうかが違法性の判断の分かれ目となるでしょう」 Q.原材料表示があれば、消費者は『他の材料』ということを理解して購入することもできますが、露店などでは原材料表示がない場合もあります。この場合、「わらび餅」として売ることに法的問題はないのでしょうか。 牧野さん「不正競争防止法が禁じる『品質、内容の虚偽表示』に該当する可能性がありますが、消費者庁が露店まで監視することは現実的に難しいでしょう」 Q.先述の「わらび餅」を買った消費者が「本当のわらび餅ではない」として、返品したり、補償を求めたりすることは可能なのでしょうか。 牧野さん「民法上は『錯誤』により、売買契約を取り消すことができますが、実際には、『わらび餅』で法的措置をとることは裁判の費用倒れになりますし、成分などの証明も困難なので、現実的には難しいでしょう」 Q.菓子の材料として、「わらび餅粉」という商品名で「サツマイモ100%使用」と銘打って販売している事例があります。法的問題はないのでしょうか。 牧野さん「『わらび餅粉』という商品名で販売している点について、不正競争防止法が禁じる『品質、内容の虚偽表示』に該当する可能性がありますが、この販売元は恐らく、『“わらび粉”とは表示せず“わらび餅粉”と表示しているし、原材料名も成分もきちんと書いているから問題ない』という趣旨で販売していると思われます。 『品質、内容の虚偽表示』に該当する可能性があるかどうかは、消費者が誤認するかどうかで判断が分かれるでしょう」 Q.材料と商品名の食い違いで、法的問題が生じた主な事例を教えてください。 牧野さん「組織的に行われるなど悪質な場合は、実刑を課された例があります。 食肉偽装の『ミートホープ事件』が有名です。『牛肉100%』と表示したひき肉に豚肉や鶏肉、豚の心臓、さらにはパンの切れ端などの異物を混入させて水増しを図っていたほか、肉の色味を調整するため血液を混ぜたり、味を調整するため、うま味調味料を混ぜたりしていたことが判明した事件です。 2008年3月19日、札幌地方裁判所は不正競争防止法違反(虚偽表示)と刑法の詐欺罪で、ミートホープ社の社長に懲役4年の実刑判決を言い渡しました」  なお、ワラビから取ったわらび粉だけで作ったわらび餅は、褐色や黒色に近い仕上がりとなるのが一般的で、スーパーなどで100円程度で売っている透明なものとは、見た目も価格も大きく異なります。

オトナンサー編集部

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