「メレンゲ」「いいとも」そして両親……「笑顔でお別れ」久本雅美の流儀
久本37歳のとき、母が余命3カ月のすい臓がんであることが医師から告げられる。大きな手術を乗り切り、それから4年生き抜いた。 「母の容体が悪くなったから、予定していた休暇の旅行をキャンセルしようとしたんです。そしたら母に『本当に貴重な休みもらってんだから行きなさい』って言われて。『えぇー、でも行けないや』って言っても『自分がやりたいことやってきなさい』って言われて数日間ですけど行ったんです。それで旅行を終えて、トランクを部屋に置いた途端に弟から危篤の連絡が来て、すぐにかけつけました」 2日間昏睡状態の末、自宅で家族が見守るなか、旅立っていった。 「最後はそばにいれたんですよね。シャワーをあびて大好きな日本茶を1杯飲んでね。『ちょっと横になるね』っていうのが最期の言葉でした。がんと闘ってやりきりましたから。告別式も明るかったですよ。『お疲れさーん』とみんな笑顔で送り出すことができて」 母の没後しばらくは、不意に襲われる喪失感から涙をこぼすこともあった。かぼちゃの煮物の作り方や冠婚葬祭のマナーはどうすればいいのか――その時々で母に教えを請うてきたことと、それがもうかなわないことを実感しながら時間をかけて乗り越えた。 2019年に他界した父・雅弘さんの式も明るいものだったという。 「父の場合は老衰で、たまたま大阪の仕事があったときに顔を出したらその日の明け方に亡くなったんです。待っててくれたんですかね。お葬式でお経を読む時にお坊さんが木魚をたたこうとしたら棒が滑って転がったんですよ。もうお父さん笑かしにかかってるなあってみんな笑ってました」
両親からたたき込まれたしつけやマナーは体に染みついている。両親からの教えを守ることで周りの人に「いい親御さんに育ててもらったんだな」と思ってもらえるかもしれない。それが親孝行になると信じ続けている。
ビビりますけど、長生きしたいなあ
昨年11月、自身のエッセー『みんな、本当はおひとりさま』を上梓した。おひとりさまはネガティブな意味ではないと釘を刺す。 「みんなね、お子さんいてもパートナーがいても結局は自分の人生を自分で決めているワケだから。みんな一人ひとりが頑張ってるっていうことで自分の体験とか思いを振り返りました」 現在63歳。母ががんを患った年齢に並んだ。 「ビビりますけど、母のことも思いながら元気に長生きしたいなあと思いますね。若い子のパワーはもちろんすごいなあと思いますけれども、年齢を重ねれば重ねるほど心で思う楽しみ方は増えてくるんじゃないかなあと思いますね」
<プロフィール> 久本雅美(ひさもと・まさみ) 1958年大阪府生まれ。劇団東京ヴォードヴィルショーを経て、1984年ワハハ本舗を設立。看板女優として活躍。テレビ番組では「秘密のケンミンSHOW 極」司会、「ヒルナンデス!」金曜レギュラーを担当。2021年『みんな、本当はおひとりさま』を出版。