【サッカー日本代表 板倉 滉の「やるよ、俺は!」】第25回 W杯最終予選、好スタートの裏側。間近に控える難関に向けて
■バーレーンで食らった知られざる〝過酷〟 中国戦を終えて23時頃に帰宿すると、深夜1時には出発、3時の便でバーレーンへの移動だった。現地の日中の気温は40℃、そして夕方を過ぎても35℃超えで、湿度は70%。 まるでサウナに入っているようだった。一度、昼間に散歩してみたときは、とんでもない暑さですぐに引き返したほどだ。試合は日没後だったけど数日間のうちで一番の暑さだったと聞いた。 僕は普段からサウナが好きで、所属先のボルシアMGの練習場でもサウナから水温10℃のアイスバスに入るのが習慣だから、暑さには強いと自負していたが、やはり中東の暑さはたまらない。 試合は中国戦に比べると、過酷だった。ピッチ状態は硬く芝が立っていて、ボールを真っすぐ蹴っても、ウネウネと転がっていく。 そんな状況に加え、国歌斉唱でのブーイングやレーザーポインターなど、アウェーの洗礼を受けつつも、緊張感を持って試合に臨んだおかげか、冷静に対応できたのは良かった。 前半、相手がタイトにきていることもあり、僕としては後ろからリズムをつくりたかった。 下がってボールを受けたがるFWの(上田)絢世には「裏に抜けてくれ」と伝え、逆に裏へ抜けようとするMFの(南野)拓実君には「相手を背負ってでもいいから、一度下りて(僕に)ボールを出してほしい」と頼んだ。 ふたりはすぐに対応してくれた。前半終了間際にPKで先制。これで流れが変わったと思う。 この2戦を圧勝できたのは、いろんな要因がある。監督の采配はもちろん、システムや選手の質がアップデートされて、向上していること。 東京五輪から始まって、長い期間、見知ったメンバーで経験を積み重ねているので、意思の疎通や連係がよりスムーズになっていること。加えて、若い世代の加入で競争が激しくなったことが考えられる。 守備陣では、DFの高井幸大君がA代表デビューを飾った。中国戦での交代時、僕は「楽しんで」と声をかけて送り出したが、彼は堂々とプレーしていた。負けていられないと思った。レギュラーの確約などない。出場機会が与えられれば全力を尽くすのみ。 さらに、DF(長友)佑都君の激励、それにハセ(長谷部誠)さんのコーチ就任もさらなる追い風となった。ハセさんはついこの間まで現役だったから、指導も実戦的。 例えば映像を分析しながら「もうちょい、この場面はポジション高く取れたね」とか、かなり緻密だった。 もうすぐ次の2戦を迎える。10月15日のホーム、対戦国オーストラリアはいい選手をそろえているので油断は禁物だけど、一番のヤマ場は11日のアウェー、サウジアラビア戦だと思う。 この国は自国での戦いとなると、まるで別次元の強さを見せる。スタジアム、観客も含めて一体となり、バーレーンとは違った〝圧〟をかけてくるのだ。 21年10月8日に行なわれたカタールW杯最終予選。僕は出場機会こそなかったが、ベンチでそれを味わった。最悪引き分けでもよいから、勝ち点1以上を必ず取る。緊張感を持って、難局を乗り越えたい。 構成・文/高橋史門 写真/JFA/AFLO