マッチングアプリで出会った「彼氏」が既婚者だった 騙されたのは私なのに、訴えられてしまう?
マッチングアプリで知り合い交際していた男性が、未婚だと嘘をついていたのが許せない――。こんな相談が弁護士ドットコムに寄せられました。 相談者の女性は、元カレとマッチングアプリを通じて付き合いました。交際時には未婚だと言っていましたが、実は交際前から結婚していたことが後になって発覚したそうです。 女性は、元カレに対して、賠償請求したいと考えているようですが可能なのでしょうか。宮地紘子弁護士に聞きました。
●「貞操権の侵害」があったかどうかがカギ
――既婚者であると嘘をついた元カレに対し、賠償請求することはできますか。 相談者の女性が「相手が既婚者と知っていたのであれば性的関係をもたなかった」場合には、貞操権の侵害として損害賠償請求ができる可能性があります。 具体的には、元カレが「独身である」とウソをつき、相談者の女性は元カレが「独身である」と信じた結果、性交渉をしており、騙された相談者の女性は違法に性的自由を侵害されたことになるため、元カレの言動は不法行為に該当すると思います。 ――既婚者と知ってからも交際を継続した場合と、直ちに交際を中止した場合で何か違いはありますか。 既婚者であることを知ってからも交際を継続した場合、女性は結婚ができないことを認識している以上、ウソを信じたため性交渉に至ったとはいえず、貞操権侵害による損害賠償は難しいかもしれません。 ――既婚者であることを隠していた元カレが刑事責任を問われることはないのでしょうか。 刑事責任を問うことまでは現実的には難しいでしょうが、元カレが独身と偽るために、独身証明書など公的な書類を偽造していた場合には、公文書偽造・同行使罪(刑法155条)等に問われる可能性もあります。
●「既婚者だと疑う事情がないことが重要」
――逆に、元カレの配偶者が女性に対して法的責任を追及することはあるのでしょうか。 そうですね、慰謝料を請求される可能性はあります。 請求された場合には、独身であると信じたことについて過失がないこと等を主張していくことになります。 具体的には、当該マッチングアプリが独身であることを登録要件としていることや、結婚指輪の跡がなかったことなど、既婚者であると疑う事情がないことが重要になってきます。 ――マッチングアプリで同種のトラブルに発展したというケースは少なくなさそうです。 交際した相手が実は既婚者であったということは職場や友人を介した出会いでも生じ得ることですが、このような出会いと比べて、マッチングアプリなどは交友関係が重ならないため、出会った相手が既婚者であるか否かが特に分かりにくく、今後、起こりやすいトラブルであると感じています。 もし、交際中に疑問を抱く事柄があった場合には、交際を進めることについて少し慎重になってみることをおすすめします。 【取材協力弁護士】 宮地 紘子(みやち ひろこ)弁護士 八事総合法律事務所 名古屋市出身。勤務弁護士を経て独立後は離婚や相続などの家事事件を中心とした案件を数多く担当。JAPAN MENSA会員。家庭では1児の母。子育てと仕事の両立に日々奮闘中。